詩史とは、先週音楽会にでかけた。詩史の「知り合いの娘さん」は水色のロングドレスを着て、ショパンとシュ...
四、 父親は、チェックのシャツにセ一タ一を重ね、コ一デュロイのずぼんをはいている。 「大学でも、優秀な...
「とりたてて言うほど好きなものも、嫌いなものも、ない」 へんな奴だ、と、もう一度思った 透はいつも穏や...
「黙るなよ」 耕二が言った。 「気難しいお子様みたいにさ」 透はむっとする。 「詩史さんの話はしたくない...
詩史さんはバッハが好きだ。マンションにいくと、ときどきかけてくれる。 「先週は由利ちゃんとスキ一にいっ...
年上の女が好きだなどと言う耕二に、このありさまをみせてやりたいと思った。 「何本飲んだの」 透の母親は...
繁華街のビリヤ一ド場はしずかで、黒服のバイトが数人、カウンタ一にもたれてしゃべっている。 深夜、透が部...
と、言うのだった。 喜美子は買た、不思議なほどしなる身体をしていた。耕二の動き一つ一つに、彼女の肉体が...
耕二は断った。運転を代わったりしてはいけないと、あらかじめ言い渡されていたのだ。 「お願い」 喜美子は...
客が一人もいなくても、商員は玉を突いてはいけないことになっている。当然だ、と、耕二は思う。午後七時。...
二年前、透が自分の生活に、詩史を加えてしまった日。加えたくなどなかったのに。 甘いソ-スのかかった鴨を...
「詩史さんは何をしてた?きのうの、土曜日」 気分を変えるべくワインを啜り、透は訊いた。 「お店にいたわ...
観音像は華奢な腕を四本のばし、間接照明の方が落ち着くと言う詩史の選んだあかりの下で、しずかな深茶色に...
「だって忙しいんだろう、バイトだのなだのさ」 高校時代から、耕二の忙しさは変わらない。 「忙しいさ」 耕...