2006-07-06 20:03:23小葵

東京タワ-27

観音像は華奢な腕を四本のばし、間接照明の方が落ち着くと言う詩史の選んだあかりの下で、しずかな深茶色にひかっていた。
あの部屋で酒をのむのだろうか。詩史さんの好きなウォッカを?一日の出来事を話したりするのかもしれない。音楽をかけたりもするのだろうか。詩史さんはビリ-.ジョエルが好きだ。
透はそのまま寝ることにした。電話はあした、かければいい。


三、
「バスケットの応援?」
半熟卵をからめた焼きアスパラガス-この店にくると詩史がきまって注文する前菜一を一切れ口に入れ、詩史はたのしそうに訊き返した。
「興味もないのに?なぜ?」
ガラス越しに、豆電球のついた植込みがみえる。
「誘われたから」
透はぽつりとこたえた 。
「暇だし」
詩史はわずかに首をかしげ、透をじっとみている。
きのう、透は大学の友人たちと、バスケット部の試合を観にいった。それを詩史に話したのだった。試合は退屈だった。ト-ナメントの一回戦が二試合、午前可午後におこなわれ、透の大学は午前中に勝った。透は窓の外ばかりみていた。窓は高い位置にあり、木の枝と空しかみえなかったけれども。