2006-05-30 19:33:27小葵

東京タワ-5

あの仕事は実入りがよかった、と、耕二は思う。街で、画家に直接声をかけられた。やせこけた爺さんで、吉祥寺の自宅まで通ってくれれは時給一万円払う、と言った。爺さんはおびただしい(意:数量很多的)量のデッサンをし、耕二は三十六万円稼(かせぐ,意:拼命勞動,賺錢)いだ。膝(ひざ)を抱えて座っているだけで。おまけに爺さんは肉食で、ときどきステ-キをごちそうしてくれた。
十一月。バイト先に向かうJRの中で、耕二は三十分仮眠する。場所を選ばずに眠れるのは特技だった。しかも、降車駅の直前できちんと目がさめる。耕二は、自分の身体を信用していた。いうまでもなく、頭も。
昔から成績はよかったし、国立大学にもあっさり入ったが、問題はそういうことじゃない。
「自分のことは自分で決めなさい」
耕二は父親に、そう言われて育った。
「決めたら、行動で示しなさい」
とも。
頭のよさというのはつまり、行動能力だ。耕二はそう思っている。
専食はスタッフル-ムで摂る(意:吃,攝取とる)。おなじビルの中に、ビリヤ一ド場と同系列のレストランがあり、そこから出前がとれるのだ。スタッフハ常時六人。女の子も含め、みんな白いシャツに黒いズボンの制服を着る。

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