2006-06-18 12:34:05小葵

東京タワ一21

大学が中央線沿いにあるので、飲め会の類ははたいてい吉祥寺か新宿だ。渉谷という街の経薄な喧噪に、耕二はどうも馴染めない。スクランブル交差点を渡り、約束の店に急ぐ。
買物をするという由利とは、吉祥寺で別れた。
「親友によとしく」
別れ際、由利はそんなことを言った。
親友。透とは、高二のときに親しくなった。誰とでも気経につきあっていながら、内心仲間を馬鹿にしていた自分とは違い、透は誰のことも馬鹿にしていないようにみえた。ただ、それは耕二自身がよく知ている。
透は母親と二人暮しで、はじめてマンションに遊びのいった日、室内が瀟洒でおどろいた。なんというか、無駄がないのだ。耕二自身、当時は実家に住んでいたし、両親は金のない方ではなかったが、それでも家というのはもっとごたごたと、父親のゴルフクラブだのトロフィ-ダの、母親の趣味のフランス刺繡のクッションだの、下らないものがあふれた空間だと思っていた。
とっつきにくいタイプではあったが、透は耕二を拒まなかった。一緒にバイクの免許をとろうと言ったときには断られたが、あとはむしろつきあいがよかった。女の子と一緒のぎくしゃくした放課後にさえ、誘えばときどき顔をだしだ。
透とは、いくつか共通点がある。用心深さとか、まわりの人間に流されないところとか。すくなくとも耕二はそう思っている。
それから、年上の女。

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