2006-06-16 19:21:34小葵

東京タワ一20

起きあがり、下着を身につけながら耕二はこたえる。
「かまわないよ」
四時半。そろそろでかけなくてはならない。透とは六時に約束をしている。きょうの三つの予定___喜美子に電話、由利とセッツス、透に会う___のうち、耕二は三番目がいちばんたのしみだった。透に会うのは夏休み以来だ。
「よかった。」
嬉しそうに由利は言う。
「またあれをつくってね」
店という耕二の働いているビリヤ-ド場で、あれというのは由利のための特別なカクテル、ということになっているが、レモネ一ドだ。
「でも、この前めたいに一人で来るなよ?俺は送ってやれないんだから」
大丈夫よ」
洗い物をおえ、由利はわざわざ自分のハンカチをだして手を拭う。
「耕二くんは心配性なのね」
お前が世間知らずなんだ、と思ったが、言わずにおいた。Tシャツとジ-パンにジャケット羽織り、耕二は、
「いくぞ」
とだけ、言った。
渉谷はひさしぶりだった。

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