2006-06-19 20:09:57小葵

東京タワ一22

自分たちは二人とも、年上の女がむいているのだ。喜美子の笑い声をおもいだす。年上の女の方が無邪気だ、と、思う。
ただ、一つ決定的に違うのは、俺の場合は計画的だったということだ。耕二は考え、エレベ-タ-にのった。
最初は厚子さんだった。
厚子さんには悪いことをしたと思っている。それに吉田にも。
「お父さんがかわいそうだわ」
そう言った吉田の声は非難にみちみちていたが、その目に浮かんでいたのは非難ではなく、痛みだった。ひたすら痛みとかなしみだった。
子供のいる女には二度と手をださない。
耕二はあのときそう決めた。
三階で、エレベ-タ-のドアがあく。五分遅刻だ。まだそう混んではいない店内で、透はビ-ルをのんでいた。
耕二は、五分遅れてやって来た。騒々しく椅子をひく音をたて、向いの席に腰掛けてから、
「元気そうじゃん」
と、言った。透がメリュ-をさしだすと、
「あ一、腹へった。昼にサンドイッチ食っただけだった。」

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