日本人が書いた日本語の文章―たとえばアマゾンの読者書評など―を読んだいると、よく「思想的に偏っている／いない」といったようなコメントをみかけます。日本では「右でもなく左でもない」「偏っていない」文章や意見が「良い」とされるようです。私はそういうコメントを見るたびにうんざりした気持ちになります。

台湾ではそういうものの言い方は存在しないか、存在したとしても私の目の届く範囲ではそういうものの言い方は使われません。大学院の授業で使った参考文献（多くはアメリカのもの）でも、そういう言葉遣いを聞いたことがありません。

私は台湾で暮らすようになって丸5年がたとうとしていますが、上記のようなものの言い方こそ、日本独特の、使い古された、定型的な言い回しだと思うようになりました。そのような言い回しをしている人こそ、日本社会独特の観念にしばられた「思想的に偏っている人」だということです。こういうものの言い方をする人は、本人的には、自分は右翼にも左翼にもとらわれていない、自由で客観的なものの見方ができる人だとおもっているのでしょう。でも、そういう立ち位置を取ること、そういうものの言い回しをすることそのものが、日本社会の制約を受けて「偏っている」ということなのだと思います。

ああいうコメントをネット上で目にするたびに、暗い気持ちになります。将来、これから生まれてくる子どもの周りに、こんなものの言い方しかできない人ばっかりが集まっていたらどうしよう、と思うのです。本人がタフな知性を持っていれば、周りにも知的にタフな人が集まってくるのでしょうか？これからは相当意識して知性を鍛えていかないと、つまらない思いをしてしまうのではないかと心配になります。つまらない話をする人やつまらないことばかり書いてある本を寄せ付けない態度って必要だと思います。そのためには、何がつまらないのか、ちゃんと分かるようにならなくちゃいけません。それには、時間をたっぷりかけてたくさん勉強しなければならないと思います。

タフにならないと。特に知性において。
これは、ここ数年、私がいつも自分に言い聞かせてきたことです。

知的にタフであるかどうかは、必ずしもテストで良い点がとれるかいなかとか、出身大学がどこか、ということとは関係ないと思います。