2010-06-30 14:35:06雪子

規格外の身体に対する憎悪

前回は「妊婦に対する憎悪」の存在について少しだけ書きました。その後、あれこれ考えているうちに、「妊婦に対する憎悪」というより、むしろ日本社会には「規格外の身体に対する憎悪」が蔓延している(少なくとも台湾と比べた場合には相対的に)のではないかと思うようになりました。

台湾と日本を比べると、台湾では「はげ頭」の男性に対する嘲笑、嫌悪は、日本に比べて少ないような気がします。

また、台湾では、特別可愛くなくて、スタイルも普通の女性(中年女性も含む)が元気いっぱいにミニスカートや半ズボンをはき、ストッキングをはかなくても堂々と公共空間に出ることが出来ます。いい年をした女性が派手な色やデザインの洋服を着ているのもよく見かけます。最初は(正直言うと今でも)苛々しましたが、別の見方をすれば、台湾ではいくつになっても自分の好きな服を好きなときに着用できるわけで、日本よりずっと「自由」だし、私にはそれをどうこう言う資格はないと自分に言い聞かせています。

日本に帰ると、若い女性はどの人もクローンのように見えます。みな同じ化粧法で、洋服の雰囲気も似ていて。本人たちは細かいところで他者と差別化することにしのぎを削っているのでしょうが、たまに帰るだけの私から見ると、工場で大量生産されて出荷されたんじゃないかと思うほど似通って見えるのです。男性サラリーマンもみな同じに見えます。

そうやって非常に同質性が高いところで、微妙な差異を演出するためにしのぎを削っている人には、規格外の身体を有する者は、そもそも視野に入らないでしょうし、通勤電車や職場で出くわしたときには、「なんでこんな場違いなヤツがここにいるんだ」と憎悪を募らせるのも無理はないのかもしれません。

日本のメディアは、朝から晩まで「この商品は若い女性向き」、「この商品は中年男性向き」、「奥様にはこの商品を」と宣伝しています。そういう宣伝を無批判に大量に受け入れていたら、企業のコマーシャルが垂れ流すある特定の性別、年代のイメージに合わない人は「規格外」とみなされ、憎まれ、排除されるのかもしれません。

だから、日本で憎悪されているのは、妊婦だけじゃなくて、子どもを生まない女性、中年になっても職場にとどまる女性、男性より仕事のできる女性、はげ頭の男性、異性愛じゃない人、障害者、老人、太っている人、病人などなど、「規格外」と分類される人は、妊婦と同様に不自由さを感じているのかもしれません。もちろん不自由さの種類や感じ方はそれぞれでしょうが。

企業がたくさん商品を売りたいのは分かりますが、私たちをこれ以上細かく分類し、ステレオタイプを再生産し、私たちに押し付けるのをやめて欲しいと思います。企業が開発した商品を誰が購入し、どのように使おうと、それは消費者の勝手だと思うのです。(安全には気をつけないといけませんが)




我要回應(本篇僅限會員/好友回應,請先登入)