2010-01-07 12:28:50雪子

日本雑感(五)「自己利益追求のための研究」

 

 

「自己利益追求のための研究」:

(四)の冒頭で内田樹のコメントを紹介しましたが、これを読んでああ、なるほど、と思いました。私が勉強をはじめたのは、80年代以降ですが、そうですね、学校で学んだのは、「勉強すれば自分が得をする」、「勉強とは自己利益の追求のためにするものである」という考え方です。恥ずかしながら、自分が本国人だったときは、こういう主流の発想に違和感を持つことはありませんでした。でも、自分が外国人になると、「自己顕示、自己利益の追求のため」に研究している知識人の講演や文章が、まったく心に響いてこないことが良くわかるようになりました。「自己顕示、自己利益の追求のため」に研究している知識人の生産するテクストは、どんなに美辞麗句を並べ立てていても、外国人は、「俺ってすごいでしょ」というメッセージしか受け取れないのです。

こういうメッセージは、同じ枠組みの中で上昇しようとしている本国人の学生をだますことはできます。だって彼らは同じ価値観を共有していますし、そのメッセージを受け取っている学生たちは、「私たちももっと勉強して彼と同じように富と名誉を独占しよう」と考えている人だから、排他的で自己顕示欲の塊の知識人が発するメッセージを「模範」と捉えるのでしょう。