2009-04-03 14:07:02雪子

Jennie

ジェニィ的圖像
Paul Gallicoの作品を読むのは、これで3作目です。

最近フランツ・ファノンを読んでぐったりしたので、気晴らしに読み始め たらとても面白いのでうれしくなりました。想像していたよりずっとずっと面白いです。この作者の作品はどれも、作者の優しさが伝わってきてとても穏やかな、いい気持ちになり ます。でも、世の中では、憎しみをむき出しにしてぶつけるような本の方が受けやすいような気がして、残念です。こういう本がもっと広 く読まれると良いのにと思います。


読み終えて:
この作品のよいところはたくさんありますが、とくに感心したのは、最後のピーターとデプシィが戦ったところです。普通の安っぽいお話なら、子供だった主人公が厳しい訓練を経て成長した男になり、最終的には憎らしい強敵をぶちのめして、富と美女を手に入れてめでたし、めでたしとなるはずです。この話は似たような構造をとっていますが、幸いそれほど単純ではありません。最後には敵にも愛を感じていますし、なにより、主人公にジェニィを手に入れることを許しません。人間に戻った主人公が手にするのは、さえない子猫です。でも、そのさえない子猫に主人公は愛情を注ぐことになるのです。

解説にも書いてありましたが、この物語全編にわたり、登場するすべての生き物、街角に対する描写には、作者の愛情が感じられます。こういう本を読むと、残念だけど悪意と憎悪に満ちた小説を書く人は、ギャリコには遠く及ばないと思いました。