2006-06-12 22:27:18小葵

東京タワ一17

「ほんとにまめだよな、お前」
マリ-.フランクというデンマ-クの歌手のCDは、先週の日曜日にWAVEでみつけた。試聴したら気に入って、買うつもりだったハイポジをやめて、そっちを買った。透は、朝からずっとそれをかけている。
気持ちよく晴れた日だ。
ふいに思いたって靴を磨いた。靴が汚れついるのは貧相(ひんそう)で嫌いなのだ。
透はうす暗い玄関に腰をおろして、自分の靴を磨きながら、脱ぎっぱなしになっている母親のハイヒ-ルを見遣る。エナメル加工されたクロコダイルの、美しいのハイヒ一ルだ。母親はゆうべ遅く帰ってきて、昼近くなるいまも、まだ寝室からでてこない。
小学生のころ、遊びにいった友達の家の玄関で、その友達の母親の靴をみてショックをうけたことがある。くたびれた茶色いろ-ヒ-ルで、おどろくほどかたちが崩れ、不恰好だった。
自分の母親がもしこんな靴をはいていたら、どんなにかなしいだろう。
あのとき透はそう思った。その家の母親はやさしく、たしたに家庭的なひとにみえたけれど。
透の母親は女性雑誌の編集長をしている。実際の金額は知らないが、結構高給とりであるらしいい。父親と離婚したときには、このマンションと透の養育費__大学を卒業するまで、半年ごとに支払われる___の他に、慰謝料というものまで少なからずふんだくっている 。
離婚は父親の女性問題が原因だったとはいえ、父親も気の毒なことだ、と、透は思う。

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