2005-05-11 08:11:34pochi

崩壊

あまりに単純な理由、
あまりにありきたりの理由で、
意識のなかの人生そのものが崩壊する。

通り雨の中で、
空を見上げたように、
朱いアーケードが滲んで、
雨の色に混じる。

それを告げたことで、
軽くなった心は、
夜の甘さだけを思い出し、
”いい思い出”を作ろうとする。

菓子折は故郷に帰り、
日日の暮らしのなかに、
甘い髪の匂いを思い
ほくそ笑む。

迷子の狗は、
突然、自分の居場所を失い、
空を見上げては、
暖かい手のひらを想う。

神は沈黙し、
結局、
足もとの蒲公英だけが、
柔らかく微笑む。