2006-10-01 01:53:22佐鳴湖的稀有動物

死神降臨

誰もが死に安息を求める。
それは生きて晒した醜さを忘れるように。
汚れ古びた衣を脱ぎ捨てるように。

雨にうたれる犬が、火の浮き漂える器の縁で低く唸る。

迷い子を朽木の箱に閉じ込め、
その蓋の開かぬを見張りながら、
そこから這い出ようとした者に呼びかけた。


『ここからは、槍のような雨に傷が痛むだろう。
 寒さに胸を患い、咳が止まらず、
 ささくれる岩肌に血を流すだろう。

 実りを祝う人は去っていった。
 歌いながら、踊りながら。
 今はもう、お前の姿を、
 刺し貫くように見つめる者しかいない。

 彼は独りでやってくる。

 もう呪われてしまえ、すがりつく縄はない。
 彼の懐は、この雨よりも冷たい。

 さあ時間が来た。
 眼を閉じろ。

 彼の姿を見てはならない。』