2010-01-07 12:24:30雪子

日本雑感(二)「村上春樹」



「村上春樹」:「歴女」ブームのところでも少し触れましたが、高崎市内で一番まとまな書店であるくまざわ書店に行って驚いたのは、日本史ブームです。山川出版の高校の日本史や世界史の教科書までが店内の目立つ場所に並べてありました。この日本史ブームと同時に気になったのは、「村上春樹の存在の薄さ」です。村上春樹の『1Q84』は200万部を売り上げたベストセラーだと聞いていたのですが、書店の売り上げベストテンの書棚には7位として飾られていますが、でも、ほんとうに「それだけ」といった感じで、とても存在感が薄いのです。文庫本のコーナーでも、目立つところに平積みされているのは日本史モノばかり。「ヨンダ」の赤い帯がかけられている文庫でも、村上春樹の作品は『神の子はみな踊る』のみ。最初は、「ああ日本史ブームなのね」と思いながら眺めていましたが、だんだん、「これってちょっとおかしいんじゃない?」と思うようになりました。日本史ブームについてはあちこちのテレビ番組で触れられていますが、テレビや新聞などのマスコミでは、村上春樹は「なかったこと」になっているという感じがします。どうしてでしょうか?200万部売れたということは200万人以上の日本人がこの作品を読んだということで、これだけの日本人が同時期にこの作品を読めば、社会になんらかのインパクトを与えているはずだと思って日本に帰ってきたのです。でも、テレビのこの1年を回顧する番組をかなりたくさん見ましたが、村上の『1Q84』 に触れることも、この作品が社会に与えた影響を論じることも、また、村上がエルサレムで文学賞を受賞し、そこでスピーチしたこともちっとも報道されませんでした。昨年の私にとって、『1Q84』はとてもインパクトの強い作品でした。だから、日本に暮らす読者にも衝撃を与えたのではないかと思っていたのですが、マスメディアはあくまでも「なかったこと」にしようとしているようです。私の日本滞在時間は短いし、接する人もとても限られているので、これがいったい何を意味しているのかきちんと調査することは不可能ですが、とても気になる現象です。