2019-07-04 14:34:52艾立克雅客部落格

リチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極、及びリチウム二次電池

リチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極、及びリチウム二次電池

WO 2012105039 A1

 

 ケイ酸塩リチウムを用い、リチウム二次電池の寿命を向上させることができるリチウム二次電池用の正極材料を提供する。本発明によるリチウム二次電池用正極材料は、組成式LiaFebMcNdSi1-eXeO4(Mは、Ti、Mn、Ni、Nb、及びMoからなる群より選択される一つ以上の元素。Nは、Mg、Al、Ca、及びZnからなる群より選択される一つ以上の元素。Xは、P及びVからなる群より選択される一つ以上の元素。1.9≦a≦2.1、0.2≦b≦0.7、0.1≦c≦0.6、0.02≦d≦0.2、0.95≦(b+c+d)≦1.05、0≦e≦0.25)で表わされ、単斜晶の割合が40重量%以上85重量%以下である。

 

1.  組成式LiaFebMcNdSi1-eXeO4(Mは、Ti、Mn、Ni、Nb、及びMoからなる群より選択される一つ以上の元素。Nは、Mg、Al、Ca、及びZnからなる群より選択される一つ以上の元素。Xは、P及びVからなる群より選択される一つ以上の元素。1.9≦a≦2.1、0.2≦b≦0.7、0.1≦c≦0.6、0.02≦d≦0.2、0.95≦(b+c+d)≦1.05、0≦e≦0.25)で表わされ、

  単斜晶の割合が40重量%以上85重量%以下であることを特徴とするリチウム二次電池用正極材料。

2.  前記単斜晶は、空間群P21/nで表される請求項1記載のリチウム二次電池用正極材料。

3.  平均一次粒子径が80nm以上210nm以下である請求項1または2記載のリチウム二次電池用正極材料。

4.  炭素との複合材料であり、炭素含率が3重量%以上6重量%以下である請求項1から3のいずれか1項記載のリチウム二次電池用正極材料。

5.  Liの含有量aが1.95≦a≦2.05である請求項1記載のリチウム二次電池用正極材料。

6.  Feの含有量bが0.4≦b≦0.6である請求項1記載のリチウム二次電池用正極材料。

7.  元素Mの含有量cが0.3≦c≦0.5である請求項1記載のリチウム二次電池用正極材料。

8.  元素Nの含有量dが0.04≦d≦0.1である請求項1記載のリチウム二次電池用正極材料。

9.  Feの含有量bと元素Mの含有量cと元素Nの含有量dの和が0.97≦(b+c+d)≦1.03である請求項1記載のリチウム二次電池用正極材料。

10.  元素Xの含有量eが0≦e≦0.15である請求項1記載のリチウム二次電池用正極材料。

11.  前記単斜晶の割合が50重量%以上75重量%以下である請求項1記載のリチウム二次電池用正極材料。

12.  請求項1から4のいずれか1項記載のリチウム二次電池用正極材料を用いることを特徴とするリチウム二次電池用正極。

13.  請求項12記載のリチウム二次電池用正極を備えることを特徴とするリチウム二次電池。

說明

 

 

リチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極、及びリチウム二次電池

 本発明は、リチウム二次電池用の正極材料、この正極材料を用いたリチウム二次電池用の正極、及びこの正極を用いたリチウム二次電池に関する。

 

 リチウムイオンを用いるリチウム二次電池は、他の二次電池と比較して、体積・重量エネルギ密度が高いといった特長を有する。そのため、携帯電話やノート型パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)等の民生機器用電源として広く使用されている。さらに、今後は、CO2の排出を抑制し環境に配慮したモータ駆動の電気自動車やモータとエンジンで駆動するハイブリッド車用の電源、または太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギの電力貯蔵用の電源などの大型用途として展開されることが期待されている。このような大型リチウム二次電池の分野では、民生機器用電源と比較して、特に、高安全かつ高容量であることが強く要求される。

 

 民生機器用電源としてのリチウム二次電池の正極材料としては、現在、コバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムなどの層状構造を有する正極材料が主流である。しかし、これらの正極材料は、充電状態における熱安定性が比較的低く、濫用時の安全性に影響がある。この原因として、層状構造を有する正極材料の場合、充電状態で温度が上昇すると結晶構造が変化し、酸素が脱離する。この酸素が電解液と反応して、発熱反応を引き起こし、安全性に影響を与える異常発熱が起こる場合がある。

 

 このような発熱反応を抑制するため、酸素との結合力の強いリンを含む、リン酸鉄リチウムやリン酸マンガンリチウムといった正極材料が、高安全の正極材料の候補としてあげられる。しかし、リンを含むため理論容量が小さく、高容量化には不向きである。

 

 高安全かつ高容量を両立できる正極材料として、近年、リンの代わりにシリコンを含み、かつ組成式中に約2つのリチウムを含む、ケイ酸鉄リチウムやケイ酸マンガンリチウム等のケイ酸塩リチウムが注目されている。

 

 特許文献1と特許文献2には、ケイ酸塩リチウムを正極材料に用いた例が開示されている。特許文献1では、オルトシリケート構造に基づくリチウム挿入型の正極材料が記載されている。特許文献2では、Liと、Fe、Mn、Co及びNiからなる群から選ばれる1種または2種以上の遷移金属と、Si及びPとを含み、γ-Li3PO4型結晶構造を有する正極材料が記載され、γ-Li3PO4型結晶構造は、Li2MSiO4と同じ結晶構造を意味すると記載されている。

 

 

 

特開2001-266882号公報  特開2009-170401号公報 

 

 ケイ酸塩リチウムは、導電性を良くするために、温度が低い条件で合成して粒子の大きさを小さくするのが一般的である。この条件で合成すると、ケイ酸塩リチウムの結晶構造は斜方晶となる。斜方晶は構造が不安定であるため、ケイ酸塩リチウムを正極材料に用いたリチウム二次電池は、寿命が短いという課題がある。

 

 特許文献1や特許文献2などの従来の技術では、多形体であるケイ酸塩リチウムを正極材料に用いたリチウム二次電池に関して、高安全と高容量を両立し、さらに結晶構造に着目して寿命を向上させた例は見られない。

 

 本発明は、ケイ酸塩リチウムを用い、リチウム二次電池の寿命を向上させることができるリチウム二次電池用の正極材料を提供することを目的とする。

 

 本発明によるリチウム二次電池用正極材料は、組成式LiaFebMcNdSi1-eXeO4(Mは、Ti、Mn、Ni、Nb、及びMoからなる群より選択される一つ以上の元素。Nは、Mg、Al、Ca、及びZnからなる群より選択される一つ以上の元素。Xは、P及びVからなる群より選択される一つ以上の元素。1.9≦a≦2.1、0.2≦b≦0.7、0.1≦c≦0.6、0.02≦d≦0.2、0.95≦(b+c+d)≦1.05、0≦e≦0.25)で表わされ、単斜晶の割合が40重量%以上85重量%以下である。

 

 本発明によれば、充放電サイクル時の容量維持率を向上させて劣化の小さい正極材料を提供することができる。さらに、この正極材料をリチウム二次電池に用いることで、充放電サイクルにおける高い容量維持率を有するリチウム二次電池を提供することができる。

 

本発明の実施形態によるリチウム二次電池の縦断面概略図である 本発明の実施形態による正極材料のX線回折プロファイルを示す図である。

 

 以下、本発明によるリチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極、及びリチウム二次電池について説明する。

 

 本発明によるリチウム二次電池用正極材料は、組成式LiaFebMcNdSi1-eXeO4(Mは、Ti、Mn、Ni、Nb、及びMoからなる群より選択される一つ以上の元素。Nは、Mg、Al、Ca、及びZnからなる群より選択される一つ以上の元素。Xは、P及びVからなる群より選択される一つ以上の元素。1.9≦a≦2.1、0.2≦b≦0.7、0.1≦c≦0.6、0.02≦d≦0.2、0.95≦(b+c+d)≦1.05、0≦e≦0.25)で表わされ、単斜晶の割合が40~85重量%(40重量%以上85重量%以下)であるケイ酸塩リチウムである。ここで、単斜晶は空間群P21/nであることが好ましい。このような構成の正極材料をリチウム二次電池に用いることで、ケイ酸塩リチウムを用いた正極材料の高容量かつ高安全といった長所を活かしつつ、充放電サイクル時の容量維持率を向上することができる。

 

 正極材料は、平均一次粒子径が80~210nm(80nm以上210nm以下)であることが好ましい。また、正極材料は、炭素との複合材料であって、正極材料中の炭素含率が3~6重量%(3重量%以上6重量%以下)であることが好ましい。

 

 次に、本発明を実施するための形態の一つを詳細に説明する。

 

 <リチウム二次電池の構成>

  図1は、本発明の実施形態によるリチウム二次電池(18650型リチウムイオン二次電池)の縦断面概略図である。

 

 リチウム二次電池10では、正極1と負極2との間に、正極1と負極2との接触を防ぐとともにイオン伝導性を有する微多孔性薄膜等のセパレータ3が介在する。正極1、負極2及びセパレータ3は、重ねられて螺旋状に捲回され、有機溶媒を使用した非水電解液とともにステンレス製またはアルミニウム製の電池缶4に封入される。

 

 正極1には、電流を取り出す正極リード7が形成され、負極2には、電流を取り出す負極リード5が形成される。正極1、負極2で発生した電流は、それぞれ正極1から正極リード7で取り出され、負極2から負極リード5で取り出される。正極リード7は、蓋部6と接触し、負極リード5は、電池缶4と接触している。

 

 正極1と負極リード5との間、及び負極2と正極リード7との間には、それぞれ短絡を防ぐため、絶縁板9が形成される。絶縁板9は、エポキシ樹脂などの絶縁性を有する材料で形成される。電池缶4と蓋部6との間には、電解液の漏れを防止するとともにプラス極の正極1とマイナス極の負極2とを分けるパッキン(シール材)8が形成される。パッキン8は、ゴムなどの電気絶縁性を有する材料で形成される。

 

 <正極>

  正極1は、アルミニウムや銅等の集電体(例えば、厚さ5μm以上25μm以下のアルミ箔、または厚さ10μm程度の銅箔等)に、正極合剤を片面につき、例えば100μm程度の厚さに塗布して形成される。正極合剤は、正極材料(正極活物質)、導電材、及び結着剤(バインダ)等からなる。正極材料は、リチウムの吸蔵放出に寄与する材料であり、詳しくは後述する。導電材は、正極1の導電性を高める。結着剤は、集電体との密着性を確保するためのものであり、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)等が用いられる。

 

 <負極>

  負極2は、銅等からなる集電体(例えば、厚さ7μm以上20μm以下の銅箔)に、負極合剤を片面につき、例えば100μm程度の厚さに塗布して形成される。負極合剤は、負極材料(負極活物質)、導電材、及び結着剤等からなる。負極材料としては、金属リチウムや、炭素材料、リチウムイオンを挿入可能またはリチウムの化合物を形成可能な材料を用いることができ、炭素材料が特に好適である。炭素材料としては、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛類、石炭系コークス、石炭系ピッチの炭化物、石油系コークス、石油系ピッチの炭化物、またはピッチコークスの炭化物等の非晶質炭素を用いる。

 

 好ましくは、これら上記の炭素材料に種々の表面処理を施したものが望ましい。これらの炭素材料は1種類で用いるだけでなく、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。

 

 また、リチウムイオン(Li+)を挿入可能またはリチウムの化合物を形成可能な材料としては、アルミニウム、スズ、ケイ素、インジウム、ガリウム、マグネシウム等の金属、これらの元素を含む合金、またはスズやケイ素等を含む金属酸化物が挙げられる。さらにまた、これらの金属や合金や金属酸化物と黒鉛系や非晶質炭素の炭素材料との複合材が挙げられる。

 

 <正極材料>

  正極1の正極材料としては、組成式LiaFebMcNdSi1-eXeO4(Mは、Ti、Mn、Ni、Nb、及びMoからなる群より選択される一つ以上の元素。Nは、Mg、Al、Ca、及びZnからなる群より選択される一つ以上の元素。Xは、P及びVからなる群より選択される一つ以上の元素。1.9≦a≦2.1、0.2≦b≦0.7、0.1≦c≦0.6、0.02≦d≦0.2、0.95≦(b+c+d)≦1.05、0≦e≦0.25)で表わされるケイ酸塩リチウムにおいて、単斜晶の割合が40~85重量%であるものを用いるのが好ましい。この組成式で表されるケイ酸塩リチウムは、挿入脱離可能なLi量が多いので、高容量化が可能である。また、Siが含まれているため、Si-Oの強固な結合によって充電時の酸素放出量を抑制できるので、高安全化が可能である。また、単斜晶のケイ酸塩リチウムは、例えば斜方晶のケイ酸塩リチウムと比較すると、構造が安定なため、Liの挿入脱離に伴う膨張収縮に対して構造変化が起こりにくい。従って、電極の劣化が起こりにくく、電池の容量維持率を向上させて寿命を長くすることができる。

 

 Feは、安価である一方、2価から3価までしか価数変化しないと考えられる。そのため、充放電時はイオン半径の変化が小さく結晶構造の面では安定だが、挿入脱離可能なLiを十分活用できないといった課題がある。そこで、2価から4価以上に価数変化できるTi、Mn、Ni、Nb、及びMoからなる群より選択される一つ以上の元素でFeの一部を置換すると、挿入脱離可能なLiを活用することができた。また、充放電時に比較的安定なFeを含んでいる場合でも、価数変化する遷移金属だけでは結晶構造の安定性が十分ではないため、価数変化しない典型元素であるMg、Al、Ca、及びZnからなる群より選択される一つ以上の元素でFeの一部を置換し、結晶構造の安定性を高めた。

 

 Siは、4価で安定な元素であり、結晶構造の安定に欠かせない元素である。さらに、少量のP及びVからなる群より選択される一つ以上の元素でSiを置換すると、電子状態の変化によって電池容量が増加することが分かった。

 

 ここで、Liの含有量aは、1.9≦a≦2.1である。a<1.9では、空のLiサイトにイオン半径の近い元素がLiサイトに混入し、Liの拡散を妨げてしまう。一方、2.1<aでは、LiがSiと反応してLi2SiO3のような異相が生成し、電池容量の低下を招く。好ましくは1.95≦a≦2.05である。この範囲では、電池容量を高くすることができる。

 

 Feの含有量bは、0.2≦b≦0.7である。b<0.2では、充放電時の結晶構造が不安定になってしまう。一方、0.7<bでは、挿入脱離可能なLiを十分活用することができず、電池容量の低下を招く。好ましくは、0.4≦b≦0.6である。この範囲では、電池の容量維持率と容量を高くすることができる。

 

 M(Ti、Mn、Ni、Nb、及びMoからなる群より選択される一つ以上の元素)の含有量cは、0.1≦c≦0.6である。c<0.1では、挿入脱離可能なLiを十分活用することができず、電池容量の低下を招く。一方、0.6<cでは、充放電時の結晶構造が不安定になってしまう。好ましくは0.3≦c≦0.5である。この範囲では、電池の容量維持率を高くすることができる。

 

 N(Mg、Al、Ca、及びZnからなる群より選択される一つ以上の元素)の含有量dは、0.02≦d≦0.2である。d<0.02では、典型元素による結晶構造安定化の効果が不十分である。一方、0.2<dでは、Nの酸化物等の異相が生成して電池容量の低下を招く。好ましくは0.04≦d≦0.1である。この範囲では、電池の容量維持率と容量を高くすることができる。

 

 Fe、M、及びNの含有量の総和(b+c+d)は、0.95≦(b+c+d)≦1.05である。(b+c+d)<0.95では、充放電に寄与できる遷移金属の割合が低下し、電池容量の低下を招く。一方、1.05<(b+c+d)では、Fe、M、及びNのいずれかがLiサイトに混入したり、異相となったりして電池特性の低下を招く。好ましくは0.97≦(b+c+d)≦1.03である。この範囲では、電池の容量維持率と容量を高くすることができる。

 

 X(P及びVからなる群より選択される一つ以上の元素)の含有量eは、0≦e≦0.25である。0.25<eではSiの割合が低下し、充放電時の結晶構造が不安定になってしまう。好ましくは0≦e≦0.15である。この範囲では、電池容量を高くすることができる。

 

 O(酸素)の量は4と規定しているが、焼成条件によって量論組成から多少ずれることが知られている。よって、ケイ酸塩リチウムにおいて、酸素量が5%程度上記の組成式と異なっていても、本発明の趣旨から外れるものではない。

 

 充放電時に安定したケイ酸塩リチウムを得るには、組成式に加え、ケイ酸塩リチウムの結晶構造も重要なポイントである。ケイ酸塩リチウムは、少なくとも単斜晶及び斜方晶の二つの結晶構造を取り得る。ケイ酸塩リチウムでは、単斜晶と斜方晶を比較すると、単斜晶のほうが安定に存在するため、充放電によって遷移金属の価数が変化しても、遷移金属が安定に存在することができる。このため、単斜晶のケイ酸塩リチウムを用いると、電池の容量維持率と寿命を向上することができる。

 

 また、単斜晶は、空間群P21/nに属する系が好ましい。単斜晶のケイ酸塩リチウムが属する空間群P21とP21/nについて比較すると、空間群P21/nで表される単斜晶のケイ酸塩リチウムを用いた電池が、最も容量維持率が高くなった。

 

 単斜晶の割合は、40~85重量%が好ましい。単斜晶が40重量%未満では、単斜晶による構造安定化の効果が小さく、充放電サイクルに伴う容量劣化が顕著になる。一方、単斜晶の割合が85重量%を超えると、単斜晶は構造が安定である半面、斜方晶と比較して対称性が低いためリチウムの拡散性に劣り、充放電容量が低下してしまう。より好ましい単斜晶の割合は、50~75重量%である。この範囲では、電池容量を高くすることができる。

 

 <正極材料の作製方法>

  次に、正極材料(ケイ酸塩リチウム)の作製方法について説明する。

 

 正極材料の作製方法には、固相法、共沈法、水熱法などの公知の合成方法を用いればよい。

 

 固相法の場合、リチウム化合物として、炭酸リチウム(Li2CO3)、水酸化リチウム(LiOH)、硫酸リチウム(Li2SO4)、酢酸リチウム(CH3CO2Li)、塩化リチウム(LiCl)、または硝酸リチウム(LiNO3)等を用いることができる。また、シリコンを含む例として、ケイ酸リチウム(Li2SiO3)を用いることができる。好ましくは、炭酸リチウム(Li2CO3)、水酸化リチウム(LiOH)、またはケイ酸リチウム(Li2SiO3)を用いる。

 

 鉄及び置換元素M(Mは、Ti、Mn、Ni、Nb、及びMoからなる群より選択される一つ以上の元素)の化合物としては、シュウ酸塩、酸化物、水酸化物、硫酸塩、酢酸塩、または炭酸塩等を用いることができる。これらは充放電時に価数変化するため、正極材料の作製時には2価の状態であることが望まれる。そのため、鉄及び置換元素Mの化合物として、2価の状態の原料を用いることが好ましい。

 

 置換元素N(Nは、Mg、Al、Ca、及びZnからなる群より選択される一つ以上の元素)の化合物としては、シュウ酸塩、酸化物、水酸化物、または炭酸塩等を用いることができる。これらは、置換元素Mと異なり充放電時に価数変化しないため、正極材料作成時の価数は規制されない。

 

 シリコン化合物としては、二酸化ケイ素(SiO2)、テトラエトキシシラン((C2H5O)4Si)、またはケイ酸リチウム(Li2SiO3)等を用いることができる。二酸化ケイ素の場合、反応性を上げるため、非晶質タイプや微粒子タイプを用いるのが好ましい。

 

 置換元素X(Xは、P及びVからなる群より選択される一つ以上の元素)の化合物としては、酸化物またはアンモニウム塩等を用いることができる。

 

 原料となる物質は、所定の組成比の粉体として供給し、これをボールミル等の機械的な方法で粉砕し混合する。粉砕混合は、乾式または湿式のどちらの方法を用いてもよい。そして、得られた粉末を500℃以上900℃以下、好ましくは600℃以上800℃以下で焼成する。焼成時間は6~96時間、より好ましくは10~24時間保持するのがよい。焼成する際の雰囲気は、窒素やアルゴン、水素といった不活性雰囲気が好ましい。焼成後は、不活性雰囲気下で徐冷したり液体窒素等を利用して急冷したりしてもよい。焼成後に得られる粉末の平均一次粒子径は、後述の実施例で示すように、80nm以上210nm以下が好ましいが、この範囲に限定されるものではない。

 

 このようにして得られた正極材料を用い、次に炭素を複合する。

 

 <炭素の複合方法>

  炭素は、正極材料の導電性を目的として混合する。そのため、正極材料の作製時に炭素源を混合すると、炭素が正極材料内部にも混在し、単に電極密度を低下させて結果的に電池の容量低下を招く。そのため、導電性を向上するには、正極材料を作製した後に炭素源と混合するほうがより効果的である。

 

 炭素源としては、ケッチェンブラック(登録商標)等の高比表面積炭素材料や、スクロース、デキストリン、アスコルビン酸、またはリンゴ酸等の炭化水素化合物が挙げられる。

 

 高比表面積炭素材料を用いる場合は、ボールミル等を用いて機械的に正極材料と混合すればよい。これにより、正極材料の表面が炭素で覆われ、導電性を向上することができる。一方、炭化水素化合物を用いる場合は、ボールミル等を用いて機械的に正極材料と混合した後、不活性雰囲気下で焼成して炭化水素化合物を炭化させ、化学的に複合化させればよい。

 

 焼成は、400~700℃で10分~3時間保持すればよい。複合する炭素量(炭素含率)は、後述の実施例で示すように、正極材料に対して3重量%以上6重量%以下であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。

 

 (元素の重量比の測定法)

  正極材料の元素の重量比は、高周波誘導結合プラズマ発光分光(以下「ICP」と略す)分析装置(株式会社日立製作所製 P-4000)を用いて、以下のように測定した。まず、ビーカに入れた45mlのイオン交換水に5gの正極材料と2mlの硝酸を投入し、スターラ(攪拌機)で30分間攪拌した。5分間放置後、濾紙で濾過した濾液をアルゴンガスとともに高周波雰囲気中に噴霧し、励起された各元素特有の光の強度を測定して、元素の重量比を算出した。

 

 また、正極材料と複合した炭素量は、固体中炭素分析装置(株式会社堀場製作所製 EMIA-110)を用いて、以下のように測定した。空焼きした磁性るつぼに100mgの試料と助燃剤を加え、酸素気流中、高周波加熱炉で燃焼した。燃焼ガス中のCO2及びCOガスを定量し、炭素の重量を算出した。

 

 (結晶構造の確認)

  作製した正極材料の結晶構造は、自動X線回折装置(株式会社リガク社製 RINT-UltimaIII。以下、「XRD」と略す)を用いて確認した。試料は、くぼみ0.5mmのガラス製サンプルフォルダに均一に充填し、線源にはCuKα、モノクロメータにはグラファイト湾曲結晶を用いた。測定条件は、管電圧を48kV、管電流を40mA、発散スリットを1°、散乱スリットを1°、受光スリットを0.3mm、モノクロメータスリットを0.6mmとし、ステップスキャン法で測定範囲(2θ)を15~80°、ステップ幅を0.02°とした。また、各ステップの測定時間は、測定範囲内のピークの最大強度が6000cps(counts per second)となるよう、8~15秒/ステップとした。得られた回折プロファイルのピーク角度から、正極材料の結晶構造を確認した。

 

 また、結晶構造の割合は、回折プロファイルを用いてリートベルト法を適用して、以下のように定量した。

 

 まず、予め内部試料としてα-アルミナが10重量%となるよう調整し、上記と同様に回折プロファイルを測定した。調整した試料は、空間群P21/nに属する単斜晶、空間群R3cに属する三方晶の混相であると仮定し、リートベルト法の定量分析によって、調整した試料における単斜晶及び三方晶の重量分率を求めた。炭素や斜方晶の正極材料が含まれている場合、三方晶であるαアルミナを10重量%に調整したにもかかわらず、三方晶の割合が10重量%を超える。そこで、三方晶の10重量%を基準値とし、調整した試料における単斜晶の重量割合を求めた。そして、調整前の、作製した正極材料における単斜晶の重量比を算出した。なお、リートベルト法を用いた解析では、信頼度因子であるRwp値が10%以下、かつ尺度因子であるS値が1.3以下であることを付加条件とした。

 

 (正極材料の平均一次粒子径の測定法)

  正極材料の平均一次粒子径は、電界放出形走査電子顕微鏡(株式会社日立製作所社製 S-4300)を用いて、以下のように算出した。

 

 正極材料の表面形状を加速電圧5kVで観察し、任意に選択した二次粒子の短軸長と一次粒子数から一次粒子径を算出した。これを5つの二次粒子で実施し、平均一次粒子径を算出した。

 

 <リチウム二次電池の作製方法>

  リチウム二次電池の作製方法の一例を以下に示す。

 

 正極材料を、炭素材料粉末の導電材及びポリフッ化ビニリデン等の結着剤とともに混合して、スラリを作製する。正極材料に対する導電材の混合比(正極材料を100重量%とした場合)は、3重量%以上10重量%以下が望ましい。ここで、正極材料と複合している炭素量は、導電材の一部とする。

 

 また、正極材料に対する結着剤の混合比(正極材料を100重量%とした場合)は、5重量%以上15重量%以下が望ましい。

 

 混合に際して、正極材料をスラリ中で均一に分散させるため、混練機を用いて充分な混練を行うことが好ましい。

 

 得られたスラリは、例えばロール転写機等によって、厚み15μm以上25μm以下の集電体のアルミ箔上に両面塗布する。両面塗布した後、プレス乾燥することによって、正極1(図1参照)の電極板を形成する。正極材料、導電材、及び結着剤を混合した合剤部分の厚さは、100μm以上300μm以下が望ましい。

 

 負極は、正極と同様に、負極材料を結着剤と混合して集電体に塗布後にプレスし、電極を形成する。ここで、電極合材の厚さは、20μm以上70μm以下が望ましい。負極の場合は、集電体として厚さ7μm以上20μm以下の銅箔を用いる。塗布の混合比は、例えば負極材料と結着剤の重量比で90:10が望ましい。

 

 合剤の塗布後にプレスした正極及び負極の電極は、所定の長さに切断し、図1に示す正極1と負極2とする。正極1と負極2には、それぞれ電流引き出し用のタブ部の正極リード7と負極リード5を、スポット溶接または超音波溶接により形成する。タブ部の正極リード7と負極リード5は、長方形の形状をした集電体とそれぞれ同じ材質の金属箔からできており、電極から電流を取り出すために設置する部材である。タブ付けされた正極1及び負極2の間に、L+イオンを通すイオン伝導性のある微多孔質膜、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等からなるセパレータ3を挟んで重ね、これを、図1に示すように、円筒状(螺旋状)に捲いて電極群とし、円筒状の電池容器である電池缶4に収納する。

 

 または、図示しないが、セパレータに袋状のものを用いてこの中に電極を収納し、これらを順次重ねて多層構造として角型の電池容器に収納してもよい。

 

 電池容器(電池缶4)の材質は、ステンレスまたはアルミが望ましい。ステンレスは、表面に不働態皮膜が形成されるので腐食しにくく、また鋼であるので強度が高いので、電池缶4内の電解液等が気化したガスによる内圧上昇に耐えられる。アルミは、軽量なので重量当りのエネルギ密度が高いという特徴を有する。

 

 電極群(正極1、負極2、及びセパレータ3)を電池容器(電池缶4)に収納した後、電池容器内に電解液を注入し、パッキン8で密封して電池が完成する。

 

 電解液としては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)、メチルアセテート(MA)、エチルメチルカーボネート(EMC)、またはメチルプロピルカーボネート(MPC)等の溶媒に、電解質として6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、4フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、または過塩素酸リチウム(LiClO4)等を溶解させたものを用いるのが望ましい。電解質濃度は、0.7M(モル)以上1.5M(モル)以下が望ましい。

 

 また、これらの電解液に、カルボン酸無水基を有する化合物や、プロパンサルトン等の硫黄元素(S)を有する化合物、ホウ素(B)を有する化合物を混合させてもよい。これらの化合物の添加目的は、負極2の表面での電解液の還元分解反応の抑制や、正極1から溶出したFe等の金属元素の負極2での還元析出の防止、電解液のイオン導電性の向上、電解液の難燃化等である。混合させる化合物は、添加目的に応じて選択すればよい。

 

 以下、さらに詳細に実施例を説明するが、本発明は本明細書に記載した実施例に限定されるものではない。

 

 実施例1で作製した正極の材料(正極材料)の特性を表1に示す。

 

 

 

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001 

 

 

(正極材料の作製)

  実施例1では、正極材料の原料として、水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、シュウ酸マグネシウム二水和物(MgC2O4・2H2O)、微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)を使用した。これらの原料を、原料比でLi:Fe:Mn:Mg:Siが、2.02:0.60:0.36:0.04:1.00となるように秤量し、粉砕機で湿式粉砕した。得られた粉末は、乾燥した後、高純度アルミナ容器に入れ、アルゴン気流下650℃で24時間焼成し、空冷した後、解砕して正極材料を得た。

 

 次に炭素の複合について説明する。

 

 正極材料100gにデキストリン12gを加え、粉砕機で混合した。得られた粉末は、高純度アルミナ容器に入れ、アルゴン気流下600℃で1時間焼成し、空冷した。

 

 図2に、炭素を複合した正極材料(炭素複合正極材料)のX線回折プロファイルを示す。得られたピークは、リートベルト解析のシミュレーションモードで得られた単斜晶(空間群P21/n)のピークと一致し、単斜晶が主体であることを確認した。元素比を測定した結果、Li:Fe:Mn:Mg:Siは、2.00:0.60:0.36:0.04:1.00だった。よって、正極材料の組成はLi2Fe0.6Mn0.36Mg0.04SiO4である。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約100μmだった。

 

 次に、結晶構造の割合の算出方法について説明する。

 

 炭素複合正極材料0.9gに内部試料としてα-アルミナを0.1g添加し、よく混合して調整試料を作製し、X線回折を測定した。測定条件は、管電圧を48kV、管電流を40mA、発散スリットを1°、散乱スリットを1°、受光スリットを0.3mm、モノクロメータスリットを0.6mmとし、ステップスキャン法で測定範囲(2θ)を15~80°、ステップ幅を0.02°、各ステップの測定時間を10秒/ステップとし、測定範囲内の最大強度が約6000cpsとなるようにした。得られた回折プロファイルを用い、リートベルト解析用ソフトRIETAN-FPを用いたリートベルト解析によってその構造を精密化して、単斜晶と三方晶(α-アルミナ)の重量割合を算出した。信頼度因子Rwp=9.1%、尺度因子S=1.23において、単斜晶は64重量%、三方晶は9.1重量%だった。よって、作製した試料、すなわち、調整試料からα-アルミナを除いた90.9重量%のうち、単斜晶は64重量%ということが分かった。作製した炭素複合正極材料における単斜晶の割合は、70重量%(=64/90.9)だった。

 

 次に、試験電池の作製について説明する。

 

 (試験電池用の正極の作製)

  得られた炭素複合正極材料を用いて、試験電池の正極を作製した。正極材料、炭素系導電材料、及び、予め溶媒のN-メチル-2-ピロジノン(NMP)に溶解させた結着剤を、質量パーセントで表してそれぞれ80:10:10の割合で混合してスラリを作製した。均一に混合されたスラリを、厚さ20μmのアルミ箔の集電体上に塗布した。その後、120℃で乾燥し、プレスにて電極密度が1.5g/cm3になるように圧縮成形した。圧縮成形後、直径15mmの円盤状に、打ち抜き金具を用いて打ち抜き、試験電池用の正極を作製した。

 

 (試験電池の作製)

  作製した正極を用い、金属リチウムを負極として、試験電池を作製した。電解液には、1.0モルのLiPF6を電解質とし、EC(エチレンカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)とVC(ビニレンカーボネート)の混合液を溶媒としたものを用いた。この試験電池を用いて行った単極放電容量の評価について説明する。

 

 充電レートを0.1C(10時間で100%の充電が完了する速さ)として4.5Vまで定電流/定電圧で充電した後、1.5Vまで0.1Cの放電レート(10時間で100%の放電が完了する速さ)で定電流放電した。これを、充電と放電とで1サイクルとして5サイクル繰り返したときの、3サイクル目の放電容量を単極放電容量と定義した。実施例1での単極放電容量は、141Ah/kgだった。

 

 <18650型電池の作製>

  18650(直径18mm×高さ650mm)型電池の作製について説明する。得られた正極材料を用いて18650型電池を作製した。

 

 正極1は、次のようにして作製した。正極材料、炭素材料粉末の導電材、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)の結着剤を、重量比で80:10:10となるように混合し、適量のNMP(N-メチルピロリドン)を加えてスラリを作製した。作製されたスラリをプラネタリーミキサで3時間攪拌して、混練を行った。次に、混練されたスラリを、ロール転写機の塗布機を用いて、正極1の集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布した。これをロールプレス機で合剤密度が1.50g/cm3となるようにプレスし、正極を得た。

 

 負極2は、次のようにして作製した。負極材料として非晶質炭素を、導電材としてカーボンブラックを、結着剤としてPVdFを用い、重量比で92:2:6となるように混合し、スラリーミキサで30分攪拌して混練を行った。混練されたスラリを、塗布機を用いて、負極2の集電体である厚さ10μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥した後に、ロールプレスでプレスし、負極の電極を得た。

 

 正極1及び負極2の電極を、それぞれ所定の大きさに裁断した。各電極のスラリの未塗布部に、それぞれ集電タブの正極リード7と負極リード5を超音波溶接で設置した。

 

 この正極1と負極2の間に、セパレータ3である多孔性のポリエチレンフィルムを挟んで円筒状(螺旋状)に捲回して電極群を構成し、この電極群を18650型の電池缶4に挿入した。

 

 正極リード7と電池缶4の蓋部6とを接続した後、蓋部6と電池缶4とをレーザー溶接により溶接して電池を密封した。

 

 最後に、電池缶4に設けた注液口から非水電解液を注入して、18650型電池(リチウム二次電池10)を得た。

 

 容量維持率の評価について説明する。

 

 作製した18650型電池の容量維持率の評価は、以下の手順で行った。0.1Cの電流を流して充電終止電圧4.5Vまで定電流充電し、1時間の休止を挟んだ後に、同じ電流値で2.5Vまで定電流放電した。これを、充電と放電とで1サイクルとして50サイクル繰り返したときの、50サイクル目の放電容量と3サイクル目の放電容量の比(50サイクル目の放電容量/3サイクル目の放電容量)を容量維持率と定義した。試験環境温度は25℃とした。結果を表2に示す。

 

 

 

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002 

 

 

 実施例2では、実施例1においてFe:Mn=0.50:0.46となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2Fe0.5Mn0.46Mg0.04SiO4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約90μmだった。

 

 実施例2の単斜晶の割合は66重量%であり、単極放電容量は166Ah/kgだった。実施例2で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 

 

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003 

 

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して、容量維持率を評価した。結果を表4に示す。

 

 

 

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004 

 

 

 実施例2で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が83%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例3では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、シュウ酸カルシウム二水和物(CaC2O4・2H2O)、及び微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Ca:Siが、2.02:0.40:0.56:0.04:1.00となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2Fe0.4Mn0.56Ca0.04SiO4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は6重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約80μmだった。

 

 実施例3の単斜晶の割合は52重量%であり、単極放電容量は154Ah/kgだった。実施例3で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例3で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が80%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例4では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、ペンタエトキシニオブ(Nb(OC2H5)5)、微粒子の酸化アルミニウム(Al2O3、一次粒子径約50nm)、微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)、及びリン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Nb:Al:Si:Pが、2.02:0.40:0.45:0.05:0.10:0.95:0.05となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2Fe0.4Mn0.45Nb0.05Al0.10Si0.95P0.05O4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は3重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約100μmだった。

 

 実施例4の単斜晶の割合は50重量%であり、単極放電容量は152Ah/kgだった。実施例4で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例4で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が86%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例5では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、ペンタエトキシモリブデン(Mo(OC2H5)5)、微粒子の酸化アルミニウム(Al2O3、一次粒子径約50nm)、微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)、及びリン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Mo:Al:Si:Pが、2.02:0.40:0.45:0.05:0.10:0.95:0.05となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2Fe0.4Mn0.45Mo0.05Al0.10Si0.95P0.05O4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は4重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約180μmだった。

 

 実施例5の単斜晶の割合は55重量%であり、単極放電容量は137Ah/kgだった。実施例5で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例5で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が84%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例6では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、微粒子の酸化チタン(TiO2、一次粒子径約50nm)、微粒子の酸化アルミニウム(Al2O3、一次粒子径約50nm)、微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)、及び五酸化バナジウム(V2O5)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Ti:Al:Si:Vが、2.02:0.50:0.40:0.05:0.05:0.95:0.05となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2Fe0.5Mn0.4Ti0.05Al0.05Si0.95V0.05O4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約80μmだった。

 

 実施例6の単斜晶の割合は68重量%であり、単極放電容量は169Ah/kgだった。実施例6で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例6で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が86%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例7では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、微粒子の酸化アルミニウム(Al2O3、一次粒子径約50nm)、及び微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Al:Siが、1.97:0.50:0.50:0.05:1.00となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li1.95Fe0.5Mn0.5Al0.05SiO4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約80μmだった。

 

 実施例7の単斜晶の割合は65重量%であり、単極放電容量は160Ah/kgだった。実施例7で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例7で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が86%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例8では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、ペンタエトキシニオブ(Nb(OC2H5)5)、シュウ酸亜鉛二水和物(ZnC2O4・2H2O)、及び微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Nb:Zn:Al:Siが、2.07:0.40:0.40::0.10:0.05:1.00となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2.05Fe0.4Mn0.4Nb0.1Zn0.05SiO4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は4重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約120μmだった。

 

 実施例8の単斜晶の割合は59重量%であり、単極放電容量は146Ah/kgだった。実施例8で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例8で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が80%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例9では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、シュウ酸マグネシウム二水和物(MgC2O4・2H2O)、微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)、及び五酸化バナジウム(V2O5)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Mg:Si:Vが、2.02:0.60:0.30::0.05:0.90:0.10となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成はLi2.00Fe0.6Mn0.3Mg0.05Si0.90V0.10O4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約100μmだった。

 

 実施例9の単斜晶の割合は75重量%であり、単極放電容量は121Ah/kgだった。実施例9で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例9で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が90%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例10では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、微粒子の酸化アルミニウム(Al2O3、一次粒子径約50nm)、微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)、及びリン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Al:Si:Pが、2.02:0.50:0.40::0.10:0.85:0.15となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2.00Fe0.5Mn0.4Al0.10Si0.85P0.15O4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約110μmだった。

 

 実施例10の単斜晶の割合は61重量%であり、単極放電容量は133Ah/kgだった。実施例10で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価し、結果を表4に示す。実施例10で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が85%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例11では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、シュウ酸マグネシウム二水和物(MgC2O4・2H2O)、及び微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Mg:Siが、1.92:0.70:0.25::0.05:1.00となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li1.90Fe0.7Mn0.25Mg0.05SiO4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約140μmだった。

 

 実施例11の単斜晶の割合は85重量%であり、単極放電容量は106Ah/kgだった。実施例11で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例11で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が90%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例12では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、シュウ酸カルシウム二水和物(CaC2O4・2H2O)、微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)、及び五酸化バナジウム(V2O5)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Ca:Si:Vが、2.12:0.70:0.10::0.10:0.80:0.20となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2.10Fe0.7Mn0.10Ca0.10Si0.80V0.20O4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約210μmだった。

 

 実施例12の単斜晶の割合は81重量%であり、単極放電容量は101Ah/kgだった。実施例12で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例12で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が92%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例13では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、シュウ酸ニッケル二水和物(NiC2O4・2H2O)、ペンタエトキシモリブデン(Mo(OC2H5)5)、微粒子の酸化アルミニウム(Al2O3、一次粒子径約50nm)、微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)、及び五酸化バナジウム(V2O5)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Ni:Mo:Al:Si:Vが、2.07:0.20:0.40::0.10:0.05:0.20:0.75:0.25となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2.05Fe0.2Mn0.40Ni0.10Mo0.05:Al0.20:Si0.75V0.25O4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は6重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約130μmだった。

 

 実施例13の単斜晶の割合は44重量%であり、単極放電容量は110Ah/kgだった。実施例13で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例13で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が73%であり、やや高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例14では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、微粒子の酸化チタン(TiO2、一次粒子径約50nm)、シュウ酸亜鉛二水和物(ZnC2O4・2H2O)、微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)、及びリン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Ti:Zn:Si:Pが、2.02:0.30:0.40::0.15:0.10:0.95:0.05となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2.00Fe0.30Mn0.40Ti0.15Zn0.10Si0.95P0.05O4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は4重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約100μmだった。

 

 実施例14の単斜晶の割合は48重量%であり、単極放電容量は117Ah/kgだった。実施例14で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例14で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が78%であり、やや高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例15では、実施例1と同様に正極材料を作製したが、炭素の複合は行わなかった。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2Fe0.6Mn0.36Mg0.04SiO4だった。正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約130μmだった。

 

 実施例15の単斜晶の割合は78重量%であり、単極放電容量は111Ah/kgだった。実施例15で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例15で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が80%であり、高い性能を示していることが分かる。

 

 実施例16では、800℃で24時間焼成した他は、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2Fe0.6Mn0.36Mg0.04SiO4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約500μmだった。

 

 実施例16の単斜晶の割合は72重量%であり、単極放電容量は100Ah/kgだった。実施例16で作製した正極材料の特性を表3に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表4に示す。実施例16で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が76%であり、やや高い性能を示していることが分かる。

 

 〔比較例1〕

  比較例1は、単斜晶の割合が94重量%と高いケイ酸鉄リチウムを正極材料に用いて正極を作製した場合を、実施例1~16と比較したものである。

 

 比較例1では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、及び微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)を使用し、原料比でLi:Fe:Siが、2.02:1.00:1.00となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成はLi2.00FeSiO4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約160μmだった。

 

 比較例1の単斜晶の割合は94重量%で、単極放電容量は88Ah/kgだった。比較例1はFeの割合が高いので単斜晶に属しやすく、また、充放電に寄与できる電子数に限りがあるため、実施例1~16と比較して単斜晶の割合が増加し、かつ単極放電容量が低下したと考えられる。比較例1で作製した正極材料の特性を表5に示す。

 

 

 

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005 

 

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表6に示す。比較例1で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が90%であった。

 

 

 

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006 

 

 

 〔比較例2〕

  比較例2は、単斜晶を全く含まない(単斜晶の割合が0重量%)のケイ酸マンガンリチウムを正極材料に用いて正極を作製した場合を、実施例1~16と比較したものである。

 

 比較例1では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、及び微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)を使用し、原料比でLi:Mn:Siが、2.02:1.00:1.00となるように秤量し、アルゴン気流下750℃で72時間焼成し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2.00MnSiO4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約70μmだった。

 

 比較例2の単斜晶の割合は0重量%で、単極放電容量は67Ah/kgだった。比較例2は、遷移金属がMn100%のため、単斜晶になりにくかったと考えられる。また、Mnが多いため電子伝導性が低くなり、実施例1~16と比較して単極放電容量が低下したと考えられる。比較例2で作製した正極材料の特性を表5に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表6に示す。比較例2で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が25%であり、実施例1~16と比較して大きく低下した。比較例2では、遷移金属がMnだけであるので、充放電時にMnのヤーンテラー歪みが生じて容量維持率が低下したと考えられる。

 

 〔比較例3〕

  比較例3は、単斜晶の割合が16重量%と低いケイ酸塩リチウム系を正極材料に用いて正極を作製した場合を、実施例1~16と比較したものである。

 

 比較例3では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、及び微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Siが、2.02:0:20:0.80:1.00となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2.00Fe0.20Mn0.80SiO4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約80μmだった。

 

 比較例3の単斜晶の割合は16重量%で、単極放電容量は111Ah/kgだった。比較例3は、Mnの割合が多いため、単斜晶になりにくかったと考えられる。比較例3で作製した正極材料の特性を表5に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表6に示す。比較例3で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が41%であり、実施例1~16と比較して低下した。比較例3は、遷移金属中のMnの割合が高く、また、単斜晶の割合が小さいため、比較例2と同様に、充放電時にMnのヤーンテラー歪みが生じて容量維持率が低下したと考えられる。

 

 〔比較例4〕

  比較例4は、単斜晶の割合が36重量%と低いケイ酸塩リチウム系を正極材料に用いて正極を作製した場合を、実施例1~16と比較したものである。

 

 比較例4では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、及び微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Siが、2.02:0:50:0.50:1.00となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2.00Fe0.50Mn0.50SiO4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約90μmだった。

 

 比較例4の単斜晶の割合は36重量%で、単極放電容量は150Ah/kgだった。比較例4は、例えば実施例7と比較すると、単斜晶の割合が低下している。比較例4と実施例7は、FeとMnの比率は同じであるが、Liの割合が異なる点と、実施例7ではAlが添加されている点が異なる。実施例7では、Alのような典型元素が添加されることで、電子状態が変化し、単斜晶の割合が高くなったと考えられる。比較例4で作製した正極材料の特性を表5に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表6に示す。比較例4で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が59%であり、実施例1~16と比較して低下した。比較例4は、単斜晶の割合が小さく、かつ充放電時に安定的に存在する典型元素がないことで構造が不安定になりやすいため、容量維持率が低下したと考えられる。

 

 〔比較例5〕

  比較例5は、典型元素N(Mg)の割合が25%と高いケイ酸塩リチウムを正極材料に用いて正極を作製した場合を、実施例1~16と比較したものである。

 

 比較例5では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、シュウ酸マグネシウム二水和物(MgC2O4・2H2O)、及び微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Mg:Siが、2.02:0:55:0.20:0.25:1.00となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2.00Fe0.55Mn0.20Mg0.25SiO4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は5重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約130μmだった。

 

 比較例5の単斜晶の割合は77重量%で、単極放電容量は74Ah/kgだった。比較例5では、典型元素であるMgの割合が高いため、X線回折プロファイルにおいて明らかに異相と思われるピークが出現した。このため、実施例1~16と比較して、単極放電容量が低下したと考えられる。比較例5で作製した正極材料の特性を表5に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表6に示す。比較例5で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が73%だった。

 

 〔比較例6〕

  比較例6は、Siの置換元素X(V)の割合が30%と高いケイ酸塩リチウムを正極材料に用いて正極を作製した場合を、実施例1~16と比較したものである。

 

 比較例6では、正極材料の原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O)、微粒子の酸化アルミニウム(Al2O3、一次粒子径約50nm)、微粒子の二酸化ケイ素(SiO2、一次粒子径約50nm)、及び五酸化バナジウム(V2O5)を使用し、原料比でLi:Fe:Mn:Al:Si:Vが、2.02:0:35:0.60:0.05:0.70:0.30となるように秤量し、実施例1と同様に炭素複合正極材料を作製した。元素比を測定した結果、正極材料の組成は、Li2.00Fe0.35Mn0.60Al0.05Si0.70V0.30O4だった。また、複合した炭素量(炭素含率)は4重量%だった。炭素複合正極材料をSEM観察した結果、平均一次粒子径は約100μmだった。

 

 比較例6の単斜晶の割合は41重量%で、単極放電容量は95Ah/kgだった。比較例6では、Siの置換元素であるVの割合が高いため、X線回折プロファイルにおいて異相と思われるピークが出現した。このため、実施例1~16と比較して、単極放電容量が低下したと考えられる。比較例6で作製した正極材料の特性を表5に示す。

 

 実施例1と同様に、18650型電池を作製して容量維持率を評価した。結果を表6に示す。比較例6で作製した正極を用いた電池は、容量維持率が60%だった。比較例6の正極材料には異相が含まれており、このために充放電時に抵抗が上昇して、実施例1~16と比較して容量維持率が低下したと考えられる。

 

 <効果>

  以上のことから、本実施形態によれば、組成式LiaFebMcNdSi1-eXeO4(Mは、Ti、Mn、Ni、Nb、及びMoからなる群より選択される一つ以上の元素。Nは、Mg、Al、Ca、及びZnからなる群より選択される一つ以上の元素。Xは、P及びVからなる群より選択される一つ以上の元素。1.9≦a≦2.1、0.2≦b≦0.7、0.1≦c≦0.6、0.02≦d≦0.2、0.95≦(b+c+d)≦1.05、0≦e≦0.25)で表わされる正極材料において、単斜晶の割合が40~85重量%であることを特徴とするリチウム二次電池用正極材料を用いることで、高容量でかつ容量維持率に優れて長寿命のリチウム二次電池を提供することができる。

 

 1…正極、2…負極、3…セパレータ、4…電池缶、5…負極リード、6…蓋部、7…正極リード、8…パッキン、9…絶縁板、10…リチウム二次電池。

 

正極活物質、二次電池用正極、二次電池、および正極活物質の製造方法
WO 2015146423 A1

摘要

 安定したカチオン交換構造を有するケイ酸鉄マンガンリチウム系の正極活物質等を提供すること。 電気化学的な方法によらず、一般式LiFeMn(1-Y)SiO(0<X2.5,0<Y1)で表され、空間群P2/nまたは空間群Pmn2を持ち、Fe/MnサイトにLiが入り、LiサイトにFe/MnおよびLiのいずれかが入ったカチオン交換構造を持つことを特徴とする正極活物質を得る。本発明では、充放電によってアモルファス化するMnを含んだケイ酸鉄マンガンリチウムでも、カチオン交換構造を得ることができる。このようなカチオン交換構造は、その後の充放電においても安定した結晶構造を維持するため、サイクル特性に優れた二次電池を得ることができる。

圖片(17)

Patent Drawing

 

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聲明所有權(8)

    1.  一般式LiFeMn(1-Y)SiO(0<X≦2.5,0<Y≦1)で表され、
       空間群P2/nまたはPmn2の少なくともいずれか一方の結晶構造を持ち、さらにFe/Mnサイトの一部にLi原子が入り、Liサイトの一部にFe原子またはMn原子のいずれかが入った、カチオン交換構造を持つことを特徴とする正極活物質。

2.      Feおよび/またはMnの一部に代えて、CoまたはNiの少なくとも一方が置換されることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。

3.      Feおよび/またはMnの一部に代えて、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Sr、Zr、Moの少なくともいずれかが置換されることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の正極活物質。

4.      Liの一部に代えて、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Zr、Moの少なくともいずれかが置換されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の正極活物質。

5.      集電体と、
 前記集電体の少なくとも片面に、請求項1から請求項3のいずれかに記載の正極活物質を含む正極活物質層と、
 を有することを特徴とする二次電池用正極。

6.      請求項4に記載の二次電池用正極と、
 リチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極と、
 前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを有し、
 リチウムイオン伝導性を有する電解質中に、前記正極と前記負極と前記セパレータとを設けたことを特徴とする二次電池。

    1.  少なくともリチウム源、鉄源、マンガン源およびシリコン源を用いて、ケイ酸鉄マンガンリチウム系の活物質を合成する工程と、
       前記活物質からリチウムの一部を脱離する工程と、
       前記活物質を加熱して、Liサイトの一部とFe/Mnサイトの一部とが入れ替わり、
      カチオン交換構造に転移させる工程と、
       を具備することを特徴とする正極活物質の製造方法。
    1. 一般式LiFeMn(1-Y)SiO(0.5≦X<1.5,0<Y≦1)で表され、
       空間群P2/nまたはPmn2の少なくともいずれか一方の結晶構造を持ち、さらにFe/Mnサイトの一部にLi原子が入り、Liサイトの一部にFe原子またはMn原子のいずれかが入り、FeまたはMnの価数が+2.5~+3.5価であるカチオン交換構造を持つことを特徴とする正極活物質。

說明

正極活物質、二次電池用正極、二次電池、および正極活物質の製造方法

 本発明は、二次電池に用いられるケイ酸鉄マンガンリチウム系正極活物質等に関する。

 近年、電子機器のモバイル化と高機能化に伴い、駆動電源である二次電池は最重要部品のひとつになっている。特に、リチウムイオン二次電池は、用いられる正極活物質と負極活物質の高い電圧から得られるエネルギー密度の高さから、従来のNiCd電池やNi水素電池に替わり、二次電池の主流の位置を占めるに至っている。しかしながら、現在のリチウムイオン電池に用いられ、標準となっているコバルト酸リチウム(LiCoO)系正極活物質と黒鉛主体のカーボン系負極活物質の組み合わせによるリチウムイオン二次電池は、昨今の高機能高負荷電子部品の消費電力量を充分に供給することができず、携帯電源としては要求性能を満たすことができなくなっている。

 さらに、コバルト酸リチウムは、レアメタルであるコバルトを用いているため、資源的制約が大きく、高価であり、価格安定性に課題がある。また、コバルト酸リチウムは、180℃以上の高温になると、多量の酸素を放出するため、異常発熱時や電池の短絡時には爆発が起きる可能性がある。

 そのため、コバルト酸リチウムよりも熱的安定性に優れる、ケイ酸鉄リチウム(LiFeSiO)やケイ酸マンガンリチウム(LiMnSiO)を始めとするポリアニオン系のケイ酸遷移金属リチウムが、資源面、コスト面、安全面を満たす材料として、注目を集めている。このケイ酸遷移金属リチウムは、組成式内にLiを2個保有しており、2電子反応による高容量を期待できる材料である。

 正極材料としてのケイ酸鉄リチウムは、合成後、充放電を行うと、Liを1個分しか脱挿入することができず、Li2個分の高容量の実現が難しいことが知られている(たとえば非特許文献1)。これは2電子目の反応電位が4.8Vと高く(非特許文献2)、実際に電池セルの充放電を行うと、4.5V以上の高電位において電解液の分解を伴い、それ以上の充放電ができないことに起因する。一方で、1電子のみ反応するケイ酸鉄リチウムにおいては、初回の充電時にその結晶構造が変化することが知られている(たとえば、特許文献1、非特許文献1、3)。ケイ酸鉄リチウムを充電すると、一部のLiサイトからLiが脱離するが、この際、Fe原子が、もともとLi原子がいたLiサイトへ移動する。この結果、放電時には、従来のFeサイトにLiが挿入され、このようなカチオン交換構造となった後は、充放電によって、Liの脱挿入が安定して行われる。

 一方、正極材料としてのケイ酸マンガンリチウムは、合成後、充放電を行うことで、その反応電位が1電子目も2電子目も4.5V以下であることから、Liを2個分脱挿入することができ、高容量を実現し得る材料であることが知られている。しかし、ケイ酸マンガンリチウムは初回の充電によって、結晶構造がアモルファス化し、2電子反応をサイクル特性良く行うことができない(たとえば非特許文献4)。

特許5298286号公報

Journal of Electrochemical Society,159(5) A525-A531(2012) Electrochemical Communications 8 (2006) 1292-1298 Journal of The American Chemical Society 2011,133,13031-13035 Chemistry of Materials 2010,22,5754-5761

 特許文献1においては、ケイ酸鉄リチウムおよびケイ酸マンガンリチウムが記載されており、充電後の結晶構造に起因するXRDパターンについても開示されている。しかし、マンガンを含むケイ酸マンガンリチウムやケイ酸鉄マンガンリチウムは、最初の充電の際にアモルファス化して、結晶構造を保持しないことが知られており、実際には、特許文献1の方法で、ケイ酸マンガンリチウムの良質なカチオン交換構造を安定的に形成することはできない。

 本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、安定したカチオン交換構造を有するケイ酸鉄マンガンリチウム系の正極活物質等を提供することを目的とする。

 前述した目的を達成するため、第1の発明は、一般式LiFeMn(1-Y)SiO(0<X≦2.5,0<Y≦1)で表され、空間群P2/nまたはPmn2の少なくともいずれか一方の結晶構造を持ち、さらにFe/Mnサイトの一部にLi原子が入り、Liサイトの一部にFe原子またはMn原子のいずれかが入った、カチオン交換構造を持つことを特徴とする正極活物質である。前述の、空間群P2/nまたはPmn2の少なくともいずれか一方の結晶構造、とは空間群P2/nまたはPmn2を母体構造とした結晶構造も含む。

ここで、空間群P2/nまたはPmn2を母体構造とは、非特許文献5のような空間群P2/nや、非特許文献6のような空間群Pmn2を持つ結晶構造であるという意味ではなく、それらの結晶構造を基とし、その原子の相対的な位置関係だけを述べているものである。
Journal of the American chemical society,2011,133,1263-1265. Electrochemistry Communications,7,156,2005.

 空間群P2/nで表される結晶構造と、空間群Pmn2で表される結晶構造は、非常に近い関係にある。これらの結晶構造は、一般式LiFeMn(1-Y)SiO(0<X≦2.5,0<Y≦1)で表される組成の物質を、焼成によって製造することで通常生成する安定的な結晶構造なので、本明細書では通常構造と呼ぶ。ここで、非特許文献5のように、ある焼成温度において、Yが1に近いとP2/nになり、Yが0に近いとPmn2となり、その間ではP2/nとPmn2の共存状態、あるいは固溶体状態になることが一般的であることが知られている。((非特許文献7)Journal of Materials Chemistry 2011,21,17823-17831)

 しかし、実際の材料では必ずしも平衡状態は得られず、また結晶構造の差もわずかのため、X線回折による同定も困難であるため、結晶構造を組成との関係で一義的に決定するのは難しい。また、正極活物質として実用に供する場合は、上記の範囲の組成であればどちらの結晶構造であっても同様に使用が可能なので、本発明ではこれらを厳密に区別せず、空間群P2/nまたはPmn2の少なくともいずれか一方の結晶構造を持つもの、と定義する。

 一方、これらの通常構造に対し、Fe原子またはMn原子と、Li原子が、通常構造の位置から入れ替わった結晶構造を、カチオン交換構造と呼ぶ。ここで、Fe/Mnサイトとは、通常構造でFe原子またはMn原子が存在する位置である。Liサイトとは、通常構造でLi原子が存在する位置である。

 Feおよび/またはMnの一部に代えて、CoまたはNiの少なくとも一方が置換されてもよい。

 Feおよび/またはMnの一部に代えて、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Sr、Zr、Moの少なくともいずれかが置換されてもよい。

また、カチオン交換構造においては、FeまたはMnは価数が+2.5~+3.5価である。

 第1の発明によれば、従来の電気化学的な手法を用いずに、合成化学的手法でカチオン交換構造を得ることができる。このため、電気化学的な手法ではアモルファス化してしまうためにカチオン交換構造に転移することができなかったケイ酸鉄マンガンリチウムに対しても、本発明を適用することができる。また、カチオン交換構造となったケイ酸鉄マンガンリチウムは、その後の充放電においてもアモルファス化せず、結晶構造を維持することができる。

 このように、Mn含有のケイ酸鉄マンガンリチウムのカチオン交換構造を製造することができるため、2電子反応をサイクル特性良く得ることができ、容量の増大およびエネルギー密度の増大した活物質を得ることができる。

 また、Feおよび/またはMnの一部に代えて、CoまたはNiの少なくとも一方が置換されても、同様の効果を得ることができる。

 また、Feおよび/またはMnの一部に代えて、さらにMg、Ca、Ti、V、Cr、Zn、Moのいずれかが添加されることで、容量の増大およびエネルギー密度の増大という前記同様の効果に加え、結晶構造の安定化や、サイクル特性を向上させることができる。

 また、Liの一部に代えて、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Zr、Moの少なくともいずれかが置換されることで、前項同様に、容量の増大、エネルギー密度の増大、結晶構造の安定化、サイクル特性の向上といった効果を得ることができる。

 また、このようなカチオン交換構造においては、FeまたはMnは価数が+2.5~+3.5価であることが分かり、FeまたはMnが価数変化することで、SiやOが価数変化せず安定構造を保っていることが分かる。

 第2の発明は、集電体と、前記集電体の少なくとも片面に、第1の発明にかかる正極活物質を含む正極活物質層と、を有することを特徴とする二次電池用正極である。

 また、第3の発明は、第2の発明にかかる二次電池用正極と、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを有し、リチウムイオン伝導性を有する電解質中に、前記正極と前記負極と前記セパレータとを設けたことを特徴とする二次電池である。

 第2、第3の発明によれば、サイクル特性に優れた二次電池用正極および二次電池を得ることができる。

 第4の発明は、少なくともリチウム源、鉄源、マンガン源およびシリコン源を用いて、ケイ酸鉄マンガンリチウム系の活物質を合成する工程と、前記活物質からリチウムの一部を脱離する工程と、前記活物質を加熱して、リチウムサイトの一部と鉄サイトの一部とが入れ替わり、カチオン交換構造に転移させる工程と、を具備することを特徴とする正極活物質の製造方法である。

 第4の発明によれば、電気化学的な手法を用いずに、カチオン交換構造を有する正極活物質を得ることができる。

 本発明により、安定したカチオン交換構造を有するケイ酸鉄マンガンリチウム系の正極活物質等を提供することができる。

非水電解質二次電池30を示す図。 微粒子製造装置1を示す概略図。 空間群Pmn2の単位格子を示す図。 空間群Pmn2を持つ結晶構造を示す図で、通常構造を示す図。 空間群Pmn2を持つ結晶構造を示す図で、カチオン交換構造を示す図。 合成直後の結晶構造20aを示す概念図。 Liの一部を脱離させた状態の結晶構造20bを示す概念図。 カチオン交換構造を示す図で、1電子充電状態の結晶構造20cを示す概念図。 カチオン交換構造を示す図で、放電状態の結晶構造20dを示す概念図。 X線回折測定におけるピークを示す図。 X線回折測定におけるピークを示す図。 通常構造とカチオン交換構造におけるFe-K端のXANES(X-ray Absorption Near Edge Structure)の結果。 図9(a)のXANESスペクトルから見積もられるFeの価数。 通常構造とカチオン交換構造におけるXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)の結果。 通常構造とカチオン交換構造におけるMn-K端のXANESの結果。 図11(a)のXANESスペクトルから見積もられるMnの価数。 通常構造とカチオン交換構造におけるXPSの結果。

 (正極活物質)
 以下図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ケイ酸鉄マンガンリチウムは、一般式LiFeMn(1-Y)SiO(0<X≦2.5,0<Y≦1)で表される。なお、通常は、0<X≦2の範囲である。また、0<Y<1であることが望ましい。

 また、Feおよび/またはMnの一部を、実用量の増大や平均電位の向上による、エネルギー密度の向上が期待できるCoまたはNiの少なくとも一方に置換してもよく、また、Feおよび/またはMnの一部を、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Zn、Moの少なくともいずれかに置換してもよい。このような元素を添加することで、結晶構造を安定化させて、サイクル寿命の向上を見込むことができ、さらに実容量の増大や電位の向上によるエネルギー密度の増大を見込むことができる。なお、ケイ酸鉄マンガンリチウムの結晶構造については、詳細を後述する。

 本発明のケイ酸鉄マンガンリチウムの粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により粒径を測定して1次粒子の粒径分布を求めると、10~200nmの範囲に存在し、平均粒径が25~100nmに存在することが好ましい。また、粒径分布は、10~150nmの範囲、平均粒径が25~80nmに存在することがより好ましい。なお、粒径分布が10~200nmの範囲に存在するとは、得られた粒径分布が10~200nmの全範囲にわたる必要はなく、得られた粒径分布の下限が10nm以上であり、上限が200nm以下であることを意味する。つまり、得られた粒径分布が10~100nmであってもよいし、50~150nmであってもよい。

 また、SiOの一部を他のアニオンにより置換させることもできる。例えば、遷移金属の酸である、チタン酸(TiO)やクロム酸(CrO)、バナジン酸(VO、V)、ジルコン酸(ZrO)、モリブデン酸(MoO、Mo24)、タングステン酸(WO)、等々であり、あるいはホウ酸(BO)やリン酸(PO)による置換である。ケイ酸イオンの一部をこれらのアニオン種により置換することにより、Liイオンの脱離と挿入の繰り返しによる結晶構造変化の抑制と安定化に寄与し、サイクル寿命を向上させる。また、これらのアニオン種は、高温においても酸素を放出し難いので、発火につながることもなく安全に用いることができる。

 正極活物質は、表面に炭素被覆を有することが好ましい。さらに、炭素被覆を有する正極活物質の粉体導電率が10-3S/cm以上であることが好ましい。正極活物質の粉体導電率が10-3S/cm以上であれば、正極に使用された際に十分な導電性を得ることができる。また、炭素被覆を有する正極活物質中の炭素の含有量が1.5重量%以上であることが好ましい。炭素の含有量が1.5重量%以上であれば、粉体導電率も高くなり、正極活物質を正極に使用する際に十分な導電性を得ることができる。

 (非水電解質二次電池用正極)
 正極活物質は、非水電解質二次電池用正極に使用される正極活物質として使用可能である。正極活物質を用いて非水電解質二次電池用正極を形成するには、正極活物質の粉末に対して、必要に応じてさらにカーボンブラックなどの導電助剤を加えると共に、ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデン、ポリイミドなどの結着剤、ブタジエンゴムなどの分散剤、カルボキシメチルセルロースほかセルロース誘導体などの増粘剤を加え水系溶媒か有機溶媒中に加えてスラリーとしたものを、アルミニウムを95重量%以上含むアルミニウム合金箔などの集電体上に、片面ないしは両面に塗布し、焼成して溶媒を揮発乾固する。これにより、集電体上に正極活物質を含む活物質層を有する、非水電解質二次電池用正極が得られる。

 正極活物質の粒径が小さい場合、スラリーの塗布性や集電体と活物質層との密着性、集電性を上げるために、正極活物質を、スプレードライ法により炭素源等と造粒してもよい。造粒した二次粒子の塊は概略1~20μm程度の大きな塊になるが、これによりスラリー塗布性が向上して、電池電極の特性と寿命もさらに良好となる。スプレードライ法に用いるスラリーは水系溶媒または非水系溶媒のいずれも用いることができる。

 さらに、正極活物質を含むスラリーをアルミニウム合金箔等の集電体上に塗工形成した正極において、活物質層形成面の集電体表面粗さとして日本工業規格(JIS B 0601-1994)に規定される十点平均粗さRzが0.5μm以上であることが望ましい。形成した活物質層と集電体との密着性に優れ、Liイオンの挿入脱離に伴う電子伝導性および集電体までの集電性が増し、充放電のサイクル寿命が向上する。

 (非水電解質二次電池)
 本実施の形態の正極を用いた高容量な二次電池を得るには、従来公知の負極活物質を用いた負極や電解液、セパレータ、電池ケース等の各種材料を、特に制限なく使用することができる。

 図1は、非水電解質二次電池30を示す断面図である。本実施の形態の非水電解質二次電池30は、正極33、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極35、およびセパレータ37から構成される。正極33、負極35およびセパレータ37は、セパレータ37-負極35-セパレータ37-正極33の順に積層配置される。また、正極33が内側になるように巻回して極板群が構成され、電池缶41内に挿入される。正極33は正極リード43を介して正極端子47に接続され、負極35は負極リード45を介して電池缶41に接続される。以上により、非水電解質二次電池30内部で生じた化学エネルギーを電気エネルギーとして外部に取り出し得るようになる。電池缶41内には、リチウムイオン伝導性を有する電解質31が、極板群を覆うように充填される。電池缶41の上端(開口部)には、環状の絶縁ガスケットを介して、封口体39が取り付けられる。封口体39は、円形蓋板とその上部の正極端子47からなり、その内部に安全弁機構を内蔵する。以上により、非水電解質二次電池30が製造される。

 本実施の形態に係る正極を用いた二次電池は、容量が高く、良好な電極特性が得られるが、二次電池を構成する非水溶媒を用いる電解液に、フッ素を含有する非水溶媒を用いるか、または添加すると、充放電による繰り返しを経ても容量が低下し難く長寿命となる。
例えば、特にはシリコン系の高容量な負極活物質を含む負極を用いる場合には、Liイオンのドープ・脱ドープによる大きな膨張収縮を抑制するために、電解液にフッ素を含有するか、フッ素を置換基として有する非水溶媒を含む電解液を用いることが望ましい。フッ素含有溶媒は充電時、特に初めての充電処理の際のLiイオンとの合金化によるシリコン系皮膜の体積膨張を緩和するので、充放電による容量低下を抑制することができる。フッ素含有非水溶媒にはフッ素化エチレンカーボネートやフッ素化鎖状カーボネートなどを用いることができる。フッ素化エチレンカーボネートにはモノ-テトラ-フルオロエチレンカーボネート(4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、FEC)が、フッ素化鎖状カーボネートにはメチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート、エチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネートなどがあり、これらを単一または複数併用して電解液に添加して用いることができる。フッ素基はシリコンと結合し易く強固でもあるので、Liイオンとの充電合金化による膨張の際にも皮膜を安定化させ膨張の抑制に寄与することができるとみられる。

 (本実施の形態に係る正極活物質の製造方法)
 まず、ケイ酸鉄マンガンリチウムの前駆体を焼成する。ケイ酸鉄マンガンリチウムの前駆体は、火炎加水分解や熱酸化などの反応過程を含む製造方法、例えば噴霧燃焼法により合成される。

 次に、得られた前駆体を炭素源と混合し、不活性ガス雰囲気中で焼成する。前駆体粒子に含まれる非晶質な化合物や酸化物形態の混合物が、焼成によりケイ酸鉄マンガンリチウム系の結晶形態の化合物に変化し、正極活物質が得られる。

 さらに、正極活物質の表面を炭素で被覆することが好ましいため、正極活物質を炭化水素ガスの雰囲気下でアニールすることが好ましい。

 (噴霧燃焼法による前駆体粒子の製造方法)
 噴霧燃焼法により前駆体粒子を製造する微粒子製造装置1の例を図2に示す。反応容器11には、微粒子合成ノズル9が配置され、燃焼ガス供給部5、支燃性ガス供給部7、及び原料溶液供給部3が接続される。燃焼ガス供給部5、支燃性ガス供給部7、及び原料溶液供給部3からはそれぞれ、可燃性ガス、エア、原料溶液等が、微粒子合成ノズル9から生じる火炎中に供給される。また、反応容器11内で生成された排気中の前駆体粒子15が、フィルタ13により回収される。

 噴霧燃焼法は、塩化物などの原料気体を供給する方法や、気化器を通して原料液体または原料溶液を供給する方法により、支燃性ガスと可燃性ガスとともに構成原料を火炎中へ供給し、構成原料を反応させ、目的物質を得る方法である。噴霧燃焼法として、VAD(Vapor-phase Axial Deposition)法などが好適な例として挙げられる。これらの火炎の温度は、可燃性ガスと支燃性ガスの混合比や、さらに構成原料の添加割合によって変化するが、通常1000~3000℃の間にあり、特に1500~2500℃程度であることが好ましく、さらに1500~2000℃程度であることがより好ましい。火炎温度が低温であると、火炎中での反応が完了する前に、微粒子が火炎の外へ出てしまう可能性がある。また、火炎温度が高温であると、生成する微粒子の結晶性が高くなりすぎ、その後の焼成工程において、安定相であるが、正極活物質としては好ましくない相が生成しやすくなってしまう。

 また、火炎加水分解法は、火炎中で構成原料が加水分解される方法である。火炎加水分解法では、火炎として酸水素火炎が一般に用いられる。可燃性ガスとして水素ガスが、支燃性ガスとして酸素ガスが供給された火炎の元に正極活物質の構成原料を含む溶液と、火炎原料(酸素ガスと水素ガス)を同時にノズルから供給して目的物質を合成する。火炎加水分解法では、不活性ガス充填雰囲気中、ナノスケールの極微小な、主として非晶質からなる目的物質の微粒子を得ることができる。

 また、熱酸化法とは、火炎中で構成原料が熱酸化される方法である。熱酸化法では、火炎として炭化水素火炎が一般に用いられる。可燃性ガスとして炭化水素系ガスが、支燃性ガスとして空気が供給された火炎の元に、構成原料と火炎原料(例えば、プロパンガスと酸素ガス)を同時にノズルから供給しながら目的物質を合成する。炭化水素系ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどのパラフィン系炭化水素ガスや、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィン系炭化水素ガスを使用できる。

 (前駆体粒子を得るための構成原料)
 本実施の形態の前駆体粒子を得るための構成原料は、少なくともリチウム源、鉄源、マンガン源、シリコン源である。さらに、必要に応じて他の元素の添加原料を用いてもよい。原料が固体の場合は、粉末のまま供給するか、液体に分散して、または溶媒に溶かして溶液とし、気化器を通じて、火炎に供給する。原料が液体の場合には、気化器を通じるほかに、供給ノズル前に加熱または減圧およびバブリングによって蒸気圧を高めて気化供給することもできる。特に、リチウム源、鉄源、マンガン源、シリコン源の混合溶液を、直径20μm以下の霧状の液滴にて供給することが好ましい。

 リチウム源としては、塩化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、臭化リチウム、リン酸リチウム、硫酸リチウムなどのリチウム無機酸塩、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、ナフテン酸リチウムなどのリチウム有機酸塩、リチウムエトキシドなどのリチウムアルコキシド、リチウムのβ―ジケトナト化合物などの有機リチウム化合物、酸化リチウム、過酸化リチウム、などを用いることができる。なお、ナフテン酸とは、主に石油中の複数の酸性物質が混合した異なるカルボン酸の混合物で、主成分はシクロペンタンとシクロヘキサンのカルボン酸化合物である。

 鉄源としては、塩化第二鉄、シュウ酸鉄、酢酸鉄、硫酸第一鉄、硝酸鉄、水酸化鉄、2-エチルヘキサン酸第二鉄、ナフテン酸鉄等を用いることができる。さらに、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、アセチルアセトネート、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの鉄の有機金属塩や、酸化鉄なども条件により使用される。

 マンガン源としては、塩化マンガン、シュウ酸マンガン、酢酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、オキシ水酸化マンガン、2-エチルヘキサン酸第二マンガン、ナフテン酸マンガン、ヘキソエートマンガン等を用いることができる。さらに、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、アセチルアセトネート、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などのマンガンの有機金属塩、酸化マンガンなども条件により使用される。

 シリコン源としては、四塩化ケイ素、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、二酸化ケイ素や一酸化ケイ素またはこれら酸化ケイ素の水和物、オルトケイ酸やメタケイ酸、メタ二ケイ酸等の縮合ケイ酸、テトラエチルオルトシリケート(テトラエトキシシラン、TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(テトラメトキシシラン、TMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルトリシロキサン(OMTSO)、テトラ-n-ブトキシシラン、等々を用いることができる。

 また、ケイ酸鉄マンガンリチウムのケイ酸の一部を他のアニオンにより置換する場合は、アニオン源として、遷移金属の酸化物、ホウ酸、リン酸の原料を加える。

 例えば、酸化チタン、亜チタン酸鉄や亜チタン酸マンガンなどの亜チタン酸金属塩、チタン酸亜鉛やチタン酸マグネシウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩、酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム、酸化クロム、クロム酸塩や二クロム酸塩、酸化マンガン、過マンガン酸塩やマンガン酸塩、コバルト酸塩、酸化ジルコニウム、ジルコン酸塩、酸化モリブデン、モリブデン酸塩、酸化タングステン、タングステン酸塩、ホウ酸や三酸化二ホウ素、メタホウ酸ナトリウムや四ホウ酸ナトリウム、ホウ砂などの各種ホウ酸塩、亜リン酸、オルトリン酸やメタリン酸などのリン酸、リン酸水素2アンモニウム、リン酸2水素アンモニウムなどのリン酸水素アンモニウム塩などを、それぞれ所望のアニオン源と合成条件に応じて用いることができる。

 これらの原料を同一反応系に火炎原料と共に供給して前駆体粒子を合成する。生成した前駆体粒子は、排気中からフィルタで回収することができる。また、以下のように芯棒の周囲に生成させることもできる。反応器の中にシリカやシリコン系の芯棒(種棒とも呼ばれる)を設置し、これに吹き付けている酸水素火炎中やプロパン火炎中に火炎原料と共にリチウム源、鉄源、マンガン源、シリコン源を供給し、加水分解または酸化反応させると、芯棒表面に主にナノメートルオーダーの微粒子が生成付着する。これらの生成微粒子を回収し、場合によってはフィルタやふるいに掛けて、不純物や凝集粗大化した部分を除く。このようにして得られた前駆体粒子は、ナノスケールの極微小な粒径を持ち、主として非晶質である微粒子からなる。

 本実施の形態に係る前駆体粒子の製造方法である噴霧燃焼法は、製造できる前駆体粒子が、非晶質であり、粒子の大きさも小さい。さらに、噴霧燃焼法では、従来の水熱合成法や固相法に比べて、短時間で大量の合成が可能であり、低コストで均質な前駆体粒子を得ることができる。

 本発明においては、前駆体粒子を還元剤と混ぜて焼成することで、通常構造の正極活物質を得ることができる。本実施の形態における前駆体とは、焼成することで、ケイ酸鉄マンガンリチウムの結晶を得ることができる材料である。特に、本実施の形態における前駆体は、鉄やマンガンの価数が3価でありアモルファスであるが、還元剤と混ぜて焼成することで鉄やマンガンの価数が3価から2価に変化する。前駆体粒子の組成は、化学量論的組成を満足することが望ましい。

 また、前駆体粒子の形状が略球形であり、粒子の平均アスペクト比(長径/短径)が、1.5以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。なお、粒子が略球形であるとは、粒子形状が幾何学的に厳密な球形や楕円球形であることまでは意味せず、わずかな突起部があっても粒子の表面がおおむね滑らかな曲面で構成されていればよい。

 これら前駆体粒子を2θ=10~60°の範囲の粉末法X線回折を測定すると、ほとんど回折ピークを有しないか、有したとしても回折ピークが小さく幅の広い回折角を示す。すなわち、前駆体粒子は、結晶子の小さい微粒子または小さな単結晶の集まった多結晶微粒子で構成されるか、これら微粒子の周囲に非晶質成分が存在する微結晶形態である。

 本実施の形態の噴霧燃焼法では、火炎中で炭素は燃焼するので、得られた前駆体粒子には、炭素が含まれない。仮に炭素成分が混入したとしても、ごく微量であり、正極に使用する際の導電助剤となるほどの量ではない。

 (正極活物質の製造)
 噴霧燃焼法による得られた、前駆体粒子をさらに炭素源と混合した後に、不活性ガス充填雰囲気下で焼成する。この際、前駆体粒子に含まれる非晶質な化合物や酸化物形態の混合物が、焼成により主にポリアニオン系のケイ酸鉄マンガンリチウム系の結晶形態の化合物に変化する。

 また、不活性ガス充填雰囲気下では、焼成時に炭素源が燃焼してしまうこと、正極活物質が酸化してしまうことを防ぐことができる。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガスなどを使用することができる。焼成後の生成物の導電性を高めるために、ポリビニルアルコールなどの多価アルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロースなどのポリマー、ショ糖などの糖類、カーボンブラックなどの導電性炭素を、炭素源として焼成前に前駆体粒子に加えて焼成する。ポリビニルアルコールは、焼成前の前駆体粒子のバインダとしての役割を果たすうえ、焼成中に鉄やマンガンを良好に還元できるので、特に好ましい。

 焼成条件は温度300~900℃と処理時間0.5~10時間の組み合わせで適宜所望の結晶性と粒径の焼成物を得ることができる。高温や長時間の焼成による過大な熱負荷は粗大な結晶粒を生成させ得るので回避すべきであり、所望の結晶性または微結晶性のケイ酸鉄マンガンリチウムが得られる程度の加熱条件で、結晶子の大きさを極力小さく抑制できる焼成条件が望ましい。焼成温度は400~700℃程度であることが好ましい。

 (炭化水素ガスによるアニール)
 焼成により正極活物質を形成した後、炭化水素ガスでアニールして、正極活物質の表面に炭素被覆を形成する。

 アニールの際の温度が、600℃~750℃であることが好ましい。アニール温度が低すぎると炭化水素ガスからの炭素の析出が遅く、高すぎると結晶が過大に成長してしまうからである。

 炭化水素ガスは、メタン、エタン、プロパン、ブタンの中から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。炭化水素ガスにも還元性があるが、さらに還元を進めるために還元性ガスを混合して供給してもよい。

 還元性ガスは、水素、アセチレン、一酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、ホルムアルデヒドの中から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。

 アニールにより、炭化水素ガスが鉄または炭化鉄を含む粒子と反応し、炭化水素ガスが分解・結合し、正極活物質の表面を炭素被覆することができる。

 なお、得られた正極活物質は、焼成工程やアニール工程において凝集していることが多いため、乳鉢やボールミルほか粉砕手段に掛けることにより、再び微粒子とすることができる。

 図4(a)は、以上のようにして形成された微粒子の、空間群Pmn2を持つ結晶構造を示す図である。なお、図4は、空間群Pmn2を持つ結晶構造を示すが、以下の説明は、空間群P2/nを持つ結晶構造についても同様である。空間群Pmn2を持つ結晶構造は、斜方晶を単位格子とし、単位格子中に16個の原子を持つ結晶構造である。
 単位格子を斜視図で表すと図3のようになり、a、b、cの各辺は直交している。LiFeMn(1-Y)SiO(0<X≦2.5,0<Y≦1)の系においては、a、b、cの長さ(格子定数)はそれぞれ6.3オングストローム、5.3オングストローム、5.0オングストローム程度の値を持ち、組成によって1%程度の変化がありうる。

 単位格子を繰り返し並べると、図4(a)のようになるが、図4(a)上でAで示される原子がFe原子またはMn原子ある。同様に、Bで示される原子がSi原子である。Cで示される原子がLi原子である。Oで示される原子がO原子である。

 また、P2/nの空間群を持つ結晶構造とは、図4(a)のPmn2の、Fe/MnサイトとSiサイトがなすa軸に平行な列の原子を取り囲む、O原子の四面体の向きが周期的に変化した構造である。よってP2/nの単位格子は図3に示す斜方晶とは異なり、軸の異なる単斜晶で長周期構造を持つが、原子の配列としては非常に近い関係にあることがわかる。

 図4(a)に示す結晶構造を通常構造と呼ぶ。この通常構造は、Si-O結合による四面体(図4に破線で記載)とFe/Mn-O結合による四面体(図4に不記載)が連なった鎖部分と、Li-O結合による四面体(図4に不記載)が連なった鎖部分で構成される。図4(a)において、Fe原子またはMn原子が存在する位置をFe/Mnサイト、Li原子が存在する位置をLiサイトと呼ぶこととする。すなわち、通常構造では、Fe/MnサイトにFe原子またはMn原子が、LiサイトにLi原子が入った構造を取っている。なお図4における、それぞれ各原子とO原子が作る四面体については、図での説明を明快にするため、Si-O結合による四面体のみ記載している。

 図5(a)は、図4(a)に示す通常構造を簡略化し、二次元的に表した結晶構造20aを示す概念図である。なお、実際には、SiおよびFeは、酸素と結合して四面体を構成しているが、図示は省略する。通常構造では、Fe/MnサイトにFe原子またはMn原子が、LiサイトにLi原子が入った構造を取り、通常は、この状態で、正極活物質として用いられる。

 本発明では、この状態から、さらに化学処理を行う。例えば、塩酸による酸処理や、水への浸漬を行う。この処理を行うことで、図5(b)に示す結晶構造20bのように、Liサイトの一部から、Li原子を脱離することができる。すなわち、Liサイトの一部が空孔となる。

 この状態から、不活性ガス雰囲気下において、所定の温度で加熱処理すると、Fe/MnサイトのFe原子またはMn原子の一部が、空孔となったLiサイトに移動すると考えられる。
 図6(a)は、Fe原子またはMn原子がLiサイトに移動し、Fe/Mnサイトに空孔ができた状態の結晶構造20cを示す図である。この状態が、カチオン交換構造を有する正極活物質の結晶構造となる。

 すなわち、従来は、この形態にするために、結晶構造20aから充電を行うことで、結晶構造20cとすることができる。しかし、本発明では、このような電気化学的な手法を用いずに、カチオン交換構造を得ることができる。したがって、結晶構造20aの状態から充電を行うことでアモルファス化するようなマンガンを含んだケイ酸鉄マンガンリチウムであっても、本手法により合成化学的にカチオン交換構造を得ることができる。

 この状態から放電を行うと、図6(b)に示す結晶構造20dとなる。これを立体的に示すと、図4(b)のようになる。なお、図中ACは、Fe原子またはMn原子とLi原子の両者が配置しうることを示す。すなわち、Li原子が、Fe/Mnサイトにできた空孔に挿入される。この後は、充放電を繰り返しても、このカチオン交換構造を維持した状態で、結晶構造20c、20dの変化を繰り返す。

 次に、上記方法で得られた正極活物質の結晶構造を、CuKα線を用いたX線回折測定で評価した。図7、図8は、測定結果である。

 図7において、Dは、LixFeSiOの通常構造(結晶構造20a)の測定結果であり、空間群P2/nを含み、またはPmn2の結晶構造が一部含まれている可能性を有する測定結果である。Eは、LixFeSiO(0<X≦2.5)のカチオン交換構造(結晶構造20d)の測定結果、Fは、Lix(Fe0.75Mn0.25)SiO(0<X≦2.5)のカチオン交換構造(結晶構造20d)の測定結果である。

 LixFeSiOとLix(Fe0.75Mn0.25)SiOのいずれも、空間群P2/nまたはPmn2の少なくともいずれか一方のカチオン交換構造が、電気化学的ではなく合成化学的に得られたことが分かる。特に22.2度付近と23.0度付近にある2つのピークが、本組成でのカチオン交換構造の特徴である。これらは、非特許文献1、または非特許文献2に示されたカチオン交換構造と同様のピークを有している。すなわち、Mnを含むLi(Fe0.75Mn0.25)SiOであっても、実質的にアモルファス化することなくカチオン交換構造へ転移することができた。

 前記により得られた正極活物質に対して、導電助剤(カーボンブラック)を10重量%となるように混合し、内部を窒素で置換したボールミルを用いて更に5時間混合した。混合粉末と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、重量比95:5の割合で混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を加えて十分混練し、正極スラリーを得た。

 厚さ15μmのアルミニウム箔集電体に、正極スラリーを50g/mの塗工量で塗布し、120℃で30分間乾燥した。その後、ロールプレスで2.0g/cmの密度になるように圧延加工し、2cmの円盤状に打抜いて正極とした。

 これらの正極と、負極に金属リチウム、電解液にエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解したものを用い、リチウム二次電池を作製した。なお、作製雰囲気は露点が-50℃以下とした。各極は集電体の付いた電槽缶に圧着して用いた。上記正極、負極、電解質及びセパレータを用いて直径25mm、厚さ1.6mmのコイン型リチウム二次電池とした。

 次に、前記のコイン型リチウム二次電池により、正極活物質の電極特性の試験評価を、
次のように実施した。
 試験温度25℃または60℃、0.1Cの電流レートにて、CC-CV法(定電流定電圧)により、4.5V(対Li/Li+)まで充電を行い、その後電流レートが0.01Cまで低下した後に充電を停止した。その後、0.1Cレートにて、CC法(定電流)により1.5V(前記に同じ)まで放電を行って、充放電容量およびサイクル寿命を測定した。

 表1に、初回放電容量の結果を示す。また、表2には、30サイクル後の放電容量を示す。本発明の実施例は、表中「カチオン交換構造」と示したものであり、これは初回充電の前(放電状態)の結晶構造がカチオン交換構造である。比較例は表中「通常構造」と示したものであり、初回充電の前(放電状態)の結晶構造が通常構造である。表1、表2を見て分かるように、初回の充電の前からカチオン交換構造となった正極活物質を使用し、充放電を行うことで、高容量かつ、通常構造(初回充電の前で)より良好なサイクル特性が得られていることが分かる。

 

 

図9(a)に、前記の方法で作製した、未充放電状態の正極活物質LixFeSiOおよびLix(Fe0.75Mn0.25)SiOの通常構造とカチオン交換構造における、Fe-K端のXANES(X-ray Absorption Near Edge Structure)の結果を示す。また図9(b)では、非特許文献8で開示された測定手法を参考に、規格化したXANESスペクトル強度の90%位置のエネルギーを吸収端立ち上がりとして、Feの価数および吸収端立ち上がり位置の相関を見積もった。これらを見ると、通常構造では+2価を持つFeが、カチオン交換構造になることで酸化し、+3価付近へ変化している様子が分かる。この時見積もったカチオン交換構造におけるFeの価数は3.1~3.2であった。
(非特許文献8)Electrochimica Acta 55 (2010) 8876.

図10に、前記の方法で作製した未充放電状態の正極活物質LiFeSiOおよびLi(Fe0.75Mn0.25)SiOの通常構造とカチオン交換構造における、Fe2p3/2のXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)の結果を示す。通常構造の結果を見ると、Feが+2価の標準サンプルと同様に710eV付近と716eV付近にブロードなピーク(比較対象とのズレ)構造が見られることから、Feが+2価付近を持つことが分かる。一方でカチオン交換構造では、これらのピーク構造が見られないため、Feが+3価付近を持つことが示唆される。XANES,XPSの結果から、カチオン交換構造のFeの価数が通常構造のFeの価数より増加していると確認できた。

図11(a)に、前記の方法で作製した未充放電状態の正極活物質Li(Fe0.75Mn0.25)SiOの通常構造とカチオン交換構造における、Mn-K端のXANESの結果を示す。また図11(b)には、非特許文献8で開示された測定手法を参考に、、規格化したXANESスペクトル強度の90%位置のエネルギーを吸収端立ち上がりとして、Mnの価数および吸収端立ち上がり位置の相関を見積もった。これらを見ると、通常構造では+2価を持つMnが、カチオン交換構造になることで酸化し、+3価方向へ近づいている様子が分かる。この時見積もった価数は2.6であった。

図12に、前記の方法で作製した正極活物質Li(Fe0.5Mn0.5)SiOの通常構造とカチオン交換構造における、Mn2p3/2のXPSの結果を示す。通常構造の結果を見ると、Mnが+2価の標準サンプルと同様に647eV付近にブロードなピーク(比較対象とのズレ)構造が見られることから、Mnが+2価付近を持つことが分かる。一方でカチオン交換構造では、このピーク構造が見られないため、Mnが+3価方向へ近づいている様子がことが示唆される。XANES,XPSの結果から、カチオン交換構造のMnの価数が通常構造のMnの価数より増加していると確認できた。

以上のことから、本発明によれば、電気化学的な方法によらず、ケイ酸遷移金属リチウムをカチオン交換構造に変化させ、未充放電状態(電池として使用する前)の組成LiFeMn(1-Y)SiO(0.5<X≦1.5,0<Y≦1)において、FeまたはMnは価数が+2.5~+3.5価であることが分かり、FeまたはMnが価数変化することで、SiやOが価数変化せず安定構造を保っていることが分かる。このため、その後の充放電においても安定した結晶構造を維持するため、サイクル特性に優れた二次電池を得ることができる。

 図8は、Li(Fe0.75Mn0.25)SiOについて、充放電を繰り返した際の結晶構造の変化を示す。Gは、充放電前の結果であり、Hは、1サイクルの充放電後の結果であり、Iは、5サイクルの充放電後の結果である。

 結果より、Mnを含むLi(Fe0.75Mn0.25)SiOであっても、アモルファス化することなくカチオン交換構造を維持した。

 以上、本発明によれば、電気化学的な方法によらず、ケイ酸遷移金属リチウムをカチオン交換構造に変化させることができる。このため、従来は充放電によってアモルファス化するMnを含んだケイ酸鉄マンガンリチウムでも、カチオン交換構造を得ることによって、その後の充放電においても安定した結晶構造を維持するため、サイクル特性に優れた二次電池を得ることができる。

 以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
 なお、図中、「O」は通常構造、「CM」は、カチオン交換構造をそれぞれ意味する。

 1………微粒子製造装置
 3………原料溶液供給部
 5………燃焼ガス供給部
 7………エア供給部
 9………微粒子合成ノズル
 11………反応容器
 13………フィルタ
 15………前駆体微粒子
 20a、20b、20c、20d………結晶構造
 30………非水電解質二次電池
 31………電解質
 33………正極
 35………負極
 37………セパレータ
 39………封口体
 41………電池缶
 43………正極リード
 45………負極リード
 47………正極端子

免費小遊戲 2019-07-05 17:10:01

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